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重賞における騎乗依頼

  • 2013年08月16日(金) 18時00分
 クラスターCでのラブミーチャンのレースぶりは見事だった。絶好のスタートダッシュも内から行く馬がいると見て3番手に控え、直線で追い比べになってから抜け出した後は、うしろから差される感じがしなかった。2着との着差こそ3/4馬身だったが、内容的には完勝といっていいだろう。ラブミーチャンは、今年になってこれで東京スプリントに続いてダートグレード2勝目。今年、地方所属馬で交流重賞を勝っている馬がほかにいないという状況だけに、がんばってほしい。

 ところで今回のラブミーチャンの鞍上は、東京スプリントに続いて戸崎圭太騎手だった。今後予定されている、東京盃、金沢で行われるJBCスプリントも引き続き戸崎騎手が騎乗することになるようだ。

 とはいえこれは確定しているわけではない。言うまでもなく、戸崎騎手は中央所属ゆえ、同じ日に別の交流レースなどで中央所属馬への騎乗あって、はじめて地方馬であるラブミーチャンへの騎乗が実現する。

 ただルールからいえば、これは本末転倒だ。本来であれば、交流レースに出走する中央馬に乗る中央の騎手は他のレースで地方馬にも乗ることができるというもの。それが今回の戸崎騎手のように、重賞などで地方の有力馬に中央の騎手を乗せたいがために、同日に行われる条件交流レースに騎乗できる馬を探すというケースは、今やめずらしいことではない。

 それゆえ最近、地方競馬の重賞(交流重賞に限らない)が行われる日には、主催者側も気を使ってなのかどうか、条件交流レースが組まれることがよくある。また地方馬に中央の騎手を乗せることが早くから決まっている場合などは、その陣営から主催者に対して、同日に条件交流を組むよう要望してそれが実現するようなケースも見られる。

 逆に中央の重賞で中央馬に地方の騎手が乗ってほしいというケースも同じ。まず中央馬への騎乗依頼ありきで、その後に、同日行われる条件戦に騎乗できる地方馬を手配するというようなパターンも最近ではめずらしいことではない。たとえば戸崎騎手が大井所属時代から中央のGIにたびたび騎乗していたのはご存知のとおり。

 かつて厩舎と騎手の結びつきが強かった時代には、この馬にはこの騎手が、というようなことが当たり前だった。しかし今は時代が変わって、有力馬を大レースで勝たせるためには一流騎手(というより勝てる可能性が高い騎手)を乗せるというような考えが目立つようになってきた。オルフェーヴルの凱旋門賞挑戦が典型的だ。かつてであれば凱旋門賞挑戦でも日本のチームで、という考えが強かった。しかし今は凱旋門賞を勝つことがまず第一の目標となり、それを実現するためにひとつひとつ最善の策を探った結果が、地元トップジョッキーの起用ということになったのだろう。

 話を戻す。地方重賞での地方馬への中央騎手の騎乗、また中央重賞での中央馬への地方騎手の騎乗ということでは、もはやルールがついてきていない状態といっていい。地方競馬では何年か前から、重賞に限っては地方騎手なら所属に限らず誰でも騎乗できるようになった。同じように、中央・地方間でも重賞なら所属に関係なく騎乗できるということを考えてもいいのではないか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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