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年度代表馬のゆくえ

  • 2013年08月23日(金) 18時00分
 地方競馬はお盆前後の重賞ラッシュが終わると一段落という気分になる。そして9月になって、日本テレビ盃の声を聞くと、いよいよJBCへ向けて秋本番となる。今年も1年の約2/3が過ぎ、そろそろ話題になるのが、「年度代表馬は?」ということ。

 地方競馬の年度表彰であるNARグランプリでは、中央との交流が盛んになって以降、交流重賞のダートグレードのタイトルや、中央の重賞での活躍が、まず大きな評価を受ける。

 かつて中央との交流が盛んには行われておらず、またアラブの競馬が全国的に行われていた時代には、アラブが年度代表馬になったこともあった。94年には大井でアラブ3冠を制したトチノミネフジが、96年には兵庫のアラブ3冠を制したケイエスヨシゼンが、それぞれサラブレッドも含めての年度代表馬に選出された。

 しかしダートで統一格付けがなされた97年以降は、同時にアラブの競馬が縮小されていったこともあり、年度代表馬はサラブレッドからしか選ばれいない。そしてその97年以降で年度代表馬に選出された馬には、いずれもGII(G格付けにはJpnも含む、以下同)以上のタイトルがあり、それが評価されての受賞となっている。

 ただその中でもGIIまでのタイトルで年度代表馬に選出されたのは、00年のベラミロード、04年のコスモバルク、そして昨年のラブミーチャンと、3回しかない。それ以外の年は地方馬もGIを勝っていて、つまりはそれだけ中央のトップクラスと互角に戦える馬がいたということ。ちなみに04年にはアジュディミツオーが東京大賞典GIを勝っていたが、中央のクラシック戦線での活躍が評価され、GIIまでのタイトルでもコスモバルクが年度代表馬となった。

 さて、そして残り4カ月ほどとなった今年だが、ここまでにグレード重賞を勝っている地方馬は、東京スプリント、クラスターCとJpnIIIを2勝したラブミーチャンしかいない。このあと予定されている東京盃やJBCスプリントを勝てばいいが、さすがに中央勢も楽には勝たせてくれないだろう。ほかに地方馬からグレード勝ち馬が出ない場合、JpnIIIのタイトルまでで年度代表馬という可能性もある。

 2歳馬については、ブリーダーズゴールドジュニアCの上位3頭や、リリーCを好タイムで勝ったクリノエリザベスなど、ホッカイドウ競馬には今年もかなりの素質馬が揃っているので、JpnIの全日本2歳優駿を勝つ馬が出てくる可能性もある。とはいえ、中央馬についてはまったくの未知数なのでまだなんともいえない状況だ。

 昨年はJpnII(東京盃)のタイトルでラブミーチャンが年度代表馬となったが、ほかにもJpnIIの関東オークスを制したアスカリーブル、JpnIIIではTCK女王盃のハルサンサン、2歳だがエーデルワイス賞のハニーパイなどがいた。

 2歳馬はともかく、今年はこのあとラブミーチャンのほかにグレード重賞を勝つ地方馬が出てくるのかどうか。

 以前にこのコラムで、<最近のダートグレードは中央馬に人気が集中して、地方馬はすべて単勝万馬券というレースがよくある>というようなことを書いたが、グレード勝ちのタイトルの少なさでも、中央との格差がますます拡大している現状がわかる。

 ラブミーチャンも今シーズン限りでの引退が予定されている。いずれ、地方馬にグレードタイトルがないなかから年度代表馬を選ばなければならないという状況も避けられないかもしれない。

 そうした状況で、以前からも言われているように、日本ローカルのJpnとはいえ40レース(国際GIの東京大賞典も含む)ものグレード重賞が行わていていいのかどうか。中央・地方という枠組みから含めて、議論や見直しの必要がありそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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