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北九州記念のニンジャとバーバラは、どこが違ったのか?

  • 2013年08月28日(水) 18時00分
 先週の続き、北九州記念のニンジャとバーバラは、どこが違ったのか?

 ともに前走が1000万と準OPの条件戦で、鮮度が高かった。ただ、単純に同じ能力の場合、前走が1000万と準OPでは、前走が1000万の方が有利だ(能力が低くても、多少の差ならば1000万の方が有利)。

 普通の競馬理論ならレベルが高い準OPの方が有利と考えるのだろうが、この連載の読者なら、今更説明する必要もないだろう。

 より鮮度が高いのは、もちろん1000万だ。一定の経験がありさえすれば、競馬は鮮度の高い方が有利なのは、今までの連載で再三検証してきたので、読者にとっては既に当たり前の話だろう。ここでは、前走1000万のニンジャが有利になるわけだ。

 この場合、「一定の経験」とは何を指すのか?がポイントになる。経験についても、今まで何度も述べてきたことなので、過去の連載を参考にして欲しいが、一つ言えるのは、この「経験」はそれほど高いハードルではないということだ。もちろん同一の経験である必要はなく、類似でればそれで良い。むしろ同質の経験は、あまり時間軸が近いと精神的な障害(ストレス)になる。

 ニンジャの場合は、前走が今回と同じ小倉1200m。今回に関しては十分な経験だ。いや、むしろ十分すぎる。同質どころか、全く同一の経験だ。経験値として重すぎて、ストレスを呼ぶ可能性さえ懸念される。

 ところが今回のニンジャは、その心配は皆無なパターンだった。前走が2クラス下の1000万だったからである。これだけクラスが違えば、前走が同一条件であるストレスは少ない。逆にバーバラの場合は一階級しか違わない同一条件だったので、格上げの鮮度があるとはいえ、やや中毒を起こす可能性を残している。

 また、ニンジャの場合、1年半近く前に重賞を走っている。これも、今回の重賞挑戦に対する経験としては大きい。

 しかも1年以上前というのが魅力だ。これなら、重賞というカテゴリーに対するストレス中毒を心配する必要はない。

 対してバーバラは、2走前に今回と同一距離での重賞を経験している。これも、前走でない点において、経験と鮮度のバランスが絶妙だ。非常に優秀なステップだが、2走前というのは、経験として近すぎて、中毒を起こす可能性を、僅かだが残している(2走前が惨敗や3着くらいの好走ならまだ良いのだが、5着という着順も、リズム的に躍動感がなくいまいち)。

 つまり、ステップ的には、あらゆる面でニンジャの方が優れていた。

 次にタイプだ。ニンジャは強引にパワーで押すグラスワンダー産駒。揉まれにくい外枠からの、強引なハイペース消耗戦でスピード任せというカテゴリーは得意だ。

 バーバラは揉まれずスムーズに競馬すると力を発揮することの多いディープインパクト産駒。グラスワンダー産駒とは違う意味で外枠は悪くない。ディープインパクト産駒は小回りでスピード優先のパワー勝負は本質的に向かないが、バーバラ自体は現実に前走でこなしているので、マイナスではない。以前書いたように、S要素の強いタイプ(短距離をこなしたり、ダートをこなしたりなど)のディープインパクト産駒の方が、中期的な消耗は案外少ない馬が多いので、中2週もそれほど気にならない。

 本質的に小回りハイペースの1200m適性は高くない血統なので、究極を要求されると遅れを取る可能性もあるが、ここで究極を要求される心配はそれほどない。

 そもそもMの血統論で重要なのは、血統的に小回りが合うとか、1200mが合うとかではない。それを論じることに意味がないとまでは言わないが、たいした問題ではない。

 現実にバーバラは前走で小回り1200mを勝っているのだから、小回り1200m適性がどうかだとか、このレースを前にそんなことを論じることに馬券的な意味があまりないのは、説明するまでもなく誰もが分かることだろう。

 今回のローテーション、枠順、ペースが、血統的に合うのか? それがこの場合、血統論の90%以上を占めるポイントになる。

 まず枠とペースについてだが、バーバラは先程書いたように、外枠を引いたのはプラスだ。グラスワンダー産駒とディープインパクト産駒を比べた場合、ともに「小倉芝1200mのハイペース外枠」という今回の絶対条件は、ほとんどイーブンと考えて良い。

 次はローテーション。グラスワンダー産駒は以前にも触れたことがあるが、充実期には比較的疲れに強い。ディープインパクト産駒も充実期には疲れに強いが、それはほぼ全ての種牡馬に言えることで、強調できるレベルでもない。むしろトップクラスの種牡馬としては、充実期においても、相対的には疲労に弱い部類といえる。

 2頭ともレース間隔が詰まって、1200mを好時計勝ちの後。格上挑戦なので疲労レベルは精神疲労中心に低いが、それでも物理的な疲労はそれなりのレベルにある。ならば、より疲労に強いグラスワンダー産駒の方を選ぶのが、この臨戦過程なら正解だ。

 結果、ニンジャがバーバラを押さえて連対した。

 ちなみに、このレースはハイペースの激戦になった。激戦になればなるほど、経験よりも鮮度が重要になり、またストレスの影響が強まるのが、競馬一般の傾向になる。そのため、勝ったツルマルレオンは、ここ2走8着以下と惨敗続きでノーストレス、2、3着馬が今見てきたように前走下級条件という鮮度馬だった。

 対して前走1200m重賞3着で1番人気だったサドンストームは10着惨敗(同馬は2走前が条件戦で、その鮮度を活かして前走好走したのだった)、前走1200mのOP特別1着だった3番人気マイネルエテルネルは7着に惨敗したのである。

 このように血統は、小倉1200m適性がどうかとかを論じるより、今回のステップ、ローテーションに対する適性を論じないと、馬券的にはあまり意味がないのだ。

 ところで今週も、先週話したグラスワンダー産駒のチョウワンダーが連闘で出てきた。そのチョウワンダーを、今週また予想で本命にした(土曜小倉4R)ので、驚いた人も多かったようだ。

 いつも私の予想に触れている人なら分かると思うが、前走人気薄から狙って激走して儲けた場合、もう一度同じ馬を本命にすることはまずないからである。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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