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揉まれ弱いはずの馬が、内枠で大激走?!

  • 2013年09月04日(水) 18時00分
 先週、「前走人気薄を本命にして激走した場合、その馬をまた本命にすることは、まずない」という話を書いた。

 ショックなどを利用して人気薄が激走したのだから、次走はそのストレスがあるし、今回は好走後で前走より人気になるため期待値も落ちるケースが多いからだ。

 それなのに、わざわざ午前中のレースを予想で取りあげて、もう一度同じ馬を本命にした。

 これには理由があった。

 まず前述したように、グラスワンダー産駒は比較的充実期の疲労に強い点。だから激走後でも、もう一度走れる可能性はそれなりに高い。

 もう1つは、重馬場が予想されたこと。

 揉まれ弱いパワー型にとって、小回り1800mは揉まれるのが一番怖い。前走はダート1400mというタフな条件からの延長だったので、それほど揉まれる意識なく競馬出来たのだが、今回は前走と同じ1800mなので、ショックで一時的にしぶとさを注入することが出来ない。

 そういう状況では、特にこの重馬場は有り難いのだ。馬群がばらけやすく、揉まれずにパワーをそのまま活かせるわけだ。

 前走は馬群の中からコースロスなく、実にスムーズに、優等生的な競馬をした。その結果の2着好走。

 この場合、次走も同じようにスムーズに競馬出来る保証はないので、レース中に前走以上のストレスを感じる確率が高く、評価は下がるのがMの基本だ。

 だが、同馬は単調なパワー型。

 馬群をスムーズに捌くという優等生的な競馬より、ロス覚悟で、強引に外から動く競馬の方が体力を活かせて合う。前回はショック療法でストレスが無かったから、馬群の中でもスムーズに競馬が出来たに過ぎない。今回、仮に同じ優等生的な競馬をしたら、ストレスで投げ出すかもしれないのだ。

 そしてレースでは、前走よりロスのある、強引な外捲り。結果、直線で断然人気とマッチレースに持ち込んで競り落とし、10番人気2着の前走ほどの配当妙味はなかったが、3番人気1着と、2走連続で美味しい馬券をもたらしてくれたのだった。

 物理的な有利不利より、馬場やタイプ、ローテーションに合った競馬をすること、その重要性を如実に示した結果と言えるだろう。

 ところで先週、揉まれやすいタイプの重馬場という話で、グラスワンダー産駒について触れた。

 それとほぼ同じパターンで、今週アグネスタキオン産駒が勝ったレースがあったので、ちょっと見てみよう。土曜小倉の八幡特別だ。

 私はこのレース、4番人気のアグネスタキオン産駒、アグネスキズナを本命にしていた。

 いつも私の予想に触れている人は、この本命もチョウワンダー同様、ギョッとしたと思う。というのも、レース間隔を詰めて、同条件の1200mを連続3着好走後のアグネスタキオン産駒だからだ。いつもなら本命どころか、真っ先に切り捨ててもおかしくない馬だろう。

 ストレス、特に疲労に弱いアグネスタキオン産駒が、連続で3着好走後だから、心身ストレスが危険水域に達している可能性は十二分にある。

 しかも、前走は今回と全く同じ小倉1200mの500万だ。ストレスダメージは、相当なものと推測される。挙げ句に前走外枠で好走した後の内枠。揉まれ弱いアグネスタキオン産駒が、一番嫌う最悪のパターンだ。

 もっと言うならば、1200mも頂けない。本質的にアグネスタキオン産駒は小回り1200m向きの心身構造をしていない。

 S要素が薄く、淡泊に量で押す競馬を得意として、揉まれ弱い。潜在スピードがあってパワーもあるのと、相対的に能力が高い馬が多いのでこなすケースも多いが、本質は1400mベストの血統だ。

 したがって、ストレスがきついときの1200mは期待値、特に勝ちきる為の単勝期待値が極端に落ちるのがアグネスタキオン産駒の特徴になるのだ。

 だから私は、そういうアグネスタキオン産駒は真っ先に切ってきた。

 だが、今回は本命。しかも、一日3レースしか選ばない、勝負レースでの本命である。

 その理由こそが、重馬場である。

 以前も書いたと思うが、アグネスタキオン産駒はパワーがあって揉まれ弱いので、ばらける重は大の得意になる。そして、ばらけるタイプで内も残れる馬場状態の重なら、むしろ外枠より内枠の方が良い。他の馬は荒れた内を嫌がって外に膨れるので、ポッカリ開いたインを、揉まれずに気持ち良く走れるからだ。後は、ジョッキーが荒れて他馬が避けて通るインを走らせる勇気があるのか?それだけである。

 今回の場合はジョッキーが逃げを選択したので、揉まれることもなく、さらに気分良く走れた。結果、4番人気1着とあっさり勝ったのであった。
 
 ところで、このレースには同じアグネスタキオン産駒のジーピークロスが1番人気で出てきた。 何故、こちらが本命ではなかったのか?

 同じアグネスタキオン産駒でも、同馬は4番手評価に落とした。

 ここ2走が5着、2着と、アグネスキズナ同様に連続好走。違うのは、まず小倉が連続3戦目だったこと。これだけで、小倉連続2戦目のアグネスキズナと比べれば、ストレスで0.1秒くらいの差は出る。

 それと2走前が5着で前走が2着だった点。単純に2着と3着では2着の方がストレスレベルがきついのもあるが、前走の方が2走前よりも3つ着順を上げたように、嵌まって激走したものなので、ストレスレベルは前走時よりもきつい。

 さらには馬体重だ。疲労に弱く自慢の体力で走るアグネスタキオン産駒なので、前走10キロ増で3着のアグネスキズナの方が、2キロ減で2着のジーピークロスより、体力ストックが上なのは、容易に想像が付く。

 以上から、アグネスキズナにジーピークロスが先着する可能性は、ほとんどないと考えて良いだろう。

 重でインが伸びるタイプの馬場では、こういう揉まれ弱い量系、体力系は、激走が怖い。アグネスタキオン産駒と同じようなタイプとして再三紹介してきたゼンノロブロイ産駒も、もちろん同様だ。

 雨の影響で馬群がばらけて、かつ極端な内伸び馬場になった札幌2歳Sで6番人気ハイアーレートが3着に、やはり当日の雨で内伸び馬場になった新潟記念で10番人気コスモネモシンが1着と、内枠のゼンノロブロイ産駒がこぞって激走したのも、同じ現象だ。

 ばらけての内伸び馬場の場合は、内枠が苦手なパワーよりのL系種牡馬が、本来走らないはずなのに、一気に逆転して逆に有利になる現象には注意したい。

 ただ、雨の場合は、外差し馬場になったり、前残りになったり、内伸びになったり、極端にふれるので、当日の降り方、そのタイミングと量次第となって、事前には読みにくいのが難点になる。

 かく言う私も、前日の流れから外差しが加速すると読んでいた新潟記念で、当日の雨の降り方で全く外差しが利かなくなって外してしまった。同じ重でも、雨量と降るタイミング、あるいは乾き始めるタイミングで、全く違う馬場になってしまうという現象だ。

 もちろん、札幌2歳Sで本命にしたステイゴールド産駒レッドリヴェールが最内枠から勝ったように、内が伸びれば馬群を割るのが特徴のC系も有利になる。しかし、体力に頼るパワー型が比較的多いのがL系なので、そういう馬の反撃が相対的に増えやすくなるのも、雨が降っての重い馬場で、ばらけるコンディションの特徴であることは、また事実である。

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。

C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。

L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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