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ばんえい競馬の窮状

  • 2013年09月20日(金) 18時00分
 ばんえい競馬に興味のある方はお気づきかもしれないが、ばんえい十勝の公式サイトにある「重賞競走スケジュール」で、今年度は重賞日程がまだ9月までしか明記されていない。これは今年度の開催が始まる時点で、予算的な面で開催日程や重賞日程が下半期(10月から来年3月)まで確定できなかったことが原因のようだ。ただ、地全協の公式サイトの「今月の重賞予定」には、ばんえいも含めて10月分の日程が掲載されているので、おそらく下半期の開催についても決まっているのだろう。さすがにもう9月も後半なので、10月以降の日程も正式に発表してほしいのだが。

 ばんえい競馬が帯広単独開催になって今年度で7年目だが、経営状態はますます厳しいものとなっている。

 今年度の一般戦の1着賞金は6万円。今と貨幣価値が違っていた戦後の昭和の時代はわからないが、昭和の終盤から現在に至るまで、この1着賞金6万円というのは、日本の競馬においては抜けて安い額であることは間違いないだろう。重賞や特別は別として、一部の2歳戦ではやや上積みがあるが、一般戦では格付けによってもこの賞金が変わることはない。そして入着賞金は2着が12,000円、3着が6,000円まで(2歳戦は4着まで)。馬主に対しては31,000〜35,000円の出走手当が支払われる(1開催2走使いの2回目は12,500円)が、1か月の預託料が少なく見積もっても10万円程度であることを考えると、ばんえい競馬は馬主にとってもかなり厳しい。

 ちなみに、近年の地方競馬でもっとも開催規模が小さいと言われた益田競馬では、廃止の直前でも下級条件の1着賞金は10万円あった。昨年度まで高知では9万円という1着賞金があったが、ネット発売の拡大などで持ち直し、今年度の1着賞金最低額は10万円となっている。

 こうした数字だけを見ても、ばんえい競馬がいかに厳しい状況で続けられているかがわかるだろう。

 それゆえ在厩頭数も減ってきていて、週3日間開催は変わらないが、昨年12月中旬までは1日12レースが基本だったのが、それ以降は1日11レースしか組めなくなっている。さらに今年度になってからは1レースの出走頭数も減ってきている。
 昨年10月からJRAのIPATでも地方競馬の馬券が発売(地方競馬IPAT)されるようになったことなどで、地方競馬ではわずかとはいえ全国的に売上がアップしている。しかしばんえい競馬はその特殊性もあり、そうした相互発売のシステムからは取り残され、それゆえ売上げも伸びていない。

 “世界でひとつ”という希少性ゆえ残していかなければならないのだが、しかし馬券の売上げ面では首を絞める結果になっているというのはなんとも皮肉だ。
 インターネットで映像も見ることができ馬券も買える時代に、競馬場といくつかの専用場外でしか馬券が売られていなかった時代にその売上げが遠く及ばない。さて、あとはどうしたらいいのだろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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