「母の父スペシャルウィーク」に異変が生じている。
エピファネイアが昨年暮れのラジオNIKKEI杯2歳Sを勝ったのが、スペシャルウィークのブルードメアサイヤーとしての重賞初勝利だった。
それまで中央では、2歳のオープン特別戦で3着に入った程度の馬しか出ておらず、地方でもジェネラルグラント(京浜盃、全日本2歳優駿2着)が出ていたぐらい。母の父として、キラリと光る成績を残していたわけではない。
エピファネイアの活躍にしても、日米の両オークスを勝った母シーザリオの力であり、スペシャルウィークのブルードメアサイヤーとしての優秀さを証明するものではないとみていた。
今夏、ピークトラムが新潟2歳Sで3着、9月に入ってマイネグレヴィルが札幌2歳Sで2着に入り、従来とはやや異なる展開を見せたが、そのまま消えていく馬も多い2歳の重賞である。とくに注目はしていなかった。しかし、これはその後に起こる大噴火の予兆だった。
次々週、ユールシンギングがセントライト記念を勝って、母の父として初のGII勝ち。さらに翌週には、エピファネイア(神戸新聞杯)、ヴェルデグリーン(オールカマー)がダブルのGII勝ちを飾った。8月までGII勝ち馬が1頭もいなかったのに、9月の重賞でいきなり3頭も誕生したのである。
しかも、ユールシンギングの母ジョリーノエルは条件馬、ヴェルデグリーンの母レディーダービーに至っては未勝利馬。名牝のシーザリオとは月とスッポンの差がある。そんな母からもGII勝ち馬が誕生したのだから、これはもうスペシャルウィークのブルードメアサイヤーとしての優秀さを、素直に認めるしかない。
自身が競走時代に見せたスタミナと成長力を、母系からうまくサポートする力を持っているようだ。エピファネイアの菊花賞はもちろんのこと、名牝ブエナビスタの仔のデビューも楽しみになってきた。