スマートフォン版へ

入札という足枷

  • 2013年09月27日(金) 18時00分
 名古屋けいばオフィシャルサイトのニュースリリース(9月24日付)に、<名古屋競馬経営改革委員会から提言された愛知県競馬組合が取り組むべきとされた事項の工程表について>として、経営改革実施の工程表が掲載されている。

 実施項目は50にも及び、大別すると「経費削減」に関する項目が9、「収入増の取組」が30もある。

 「収入増の取組」については、出された意見をすべて並べました的な感じが否めず、中にはこれが収入増につながるのだろうかという項目もあり、取捨選択して実施できるものはしていくということだろうか。すでに実施中という項目もあるが、予算も人もギリギリまで削減された状況で、これほど多くのことを新たに始めるのは現実的ではないだろう。

 もっとも気になったのは、「経費削減」の中の「各種契約の見直し」という5つの項目だ。民間業者への業務委託に関しての見直しや、今以上に入札業者を増やすことによって経費の削減ができないか、ということが繰り返し、しつこいほどに言われている。

 今は役所的なところから民間への業務の発注は、透明性・公平性確保のため原則として入札を経ない随意契約は国から厳しく指導されている。しかし毎年毎年の入札は、その作業自体が相当な負担になって業務を圧迫していないだろうか。また入札業者を増やしたところで、劇的な経費削減になるかどうかも疑問だ。競馬は専門的な業務が多く、経費削減を優先すればクオリティの低下というリスクも考えられる。いくら「収入増の取組」を実施したところで、競馬そのものに関わる業務で不具合が起きたり質が低下することがあれば、ファンや馬主は離れてしまう。

 たとえばこれはお隣の笠松競馬場での2年ほど前の出来事ではあるが、馬場整備のハロー車がレース中であるにもかかわらず馬場に侵入し、レースが不成立になるということがあった。4コーナーを回ってきた馬がそのままハロー車に激突していてもおかしくないような状況で、とりあえず人馬ともに無事だったのは不幸中の幸いだった。

 経費削減を求める方法は入札だけではないだろう。とはいえ、いまのしくみでは原則としてそうせざるをえないことになっている。解決方法があるとすれば、主催を官から民に移行することか。そうすれば随意契約に問題が生じなくなる。

 馬券を売ってさえいれば儲かった時代はよかったが、競馬に限らず他の公営競技も含め、官主導での経営・運営には限界がある。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング