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オールカマーを使っての血統解説〜ジャングルポケット、シンボリクリスエス、ハーツクライ

  • 2013年10月02日(水) 18時00分
 先週は、オールカマーのムスカテールの話で終わっていたので、その続きから解説していこうと思う。

 ダイワファルコンはもともとフレッシュな方が強いタイプで休み明けは向くし、ご存じ中山巧者でもある。ただ、マイナス材料もプラス材料と同じくらいにあった。

 好位から競馬をするタイプが外枠を引いたので、上手くスタートから馬群がばらけて内に入り込めないと、ずっと好位の外々を回るリスクがある。今の開幕間もない高速馬場で外々を回ると、物理的にかなり不利だ。追い込み馬や先行馬なら、外々を回るリスクはかなり減るのだが、好位馬の高速中山の外枠は乗りにくい。

 加えてダイワファルコンは精神コントロールの難しいジャングルポケット産駒で、馬群に入れて壁を作らずに、ずっと外々回ると掛かったり、集中力を切らすリスクが高い。

 最後に昨年2着だったときと全く同じローテーションというのが気になる。

 生涯鮮度が昨年より落ちて、昨年と同一のステップでは、昨年の2着を上回って勝つ可能性は高くない。昨年がパワーのあるS系が精神コントロール上、一般的に最も得意とする「重馬場での内枠」だったことを考慮に入れると、尚更である。

 得意の中山の休み明けというプラスと、高速馬場での外枠+鮮度というマイナスを考慮に入れると、相手の1頭評価が妥当だろう。

 サトノアポロはどうか?

 量の豊富なL系で、フレッシュでストレスの無い休み明けは最も得意とするジャンルだ。距離も2000m〜2200mがベスト。それで5番人気なら、本命にしようかとも思った。

 が、どうしてもL系の多頭数で、開幕間もない馬場の2番枠というのが気になる。

 馬場がまだ良い中山なので内に馬は殺到するだろう。L系だけに揉まれるとよくないので、その状況での17頭立ての2番枠はどうしても気になる。それでも格下の相手なら問題ないが、強い相手には踏ん張ろうとしないL系なので、前走より相手強化のGIIで揉まれる形というのは気になってしまう。

 ということで、押さえの1頭程度が妥当だ。

 ではオーシャンブルーはどうか?

 C系ステイゴールド産駒で、混戦の多頭数は有馬記念を思い出すまでもなく、大の得意だ。

 ただ休み明けはフレッシュになるぶん悪くはないが、C系だけに他の休み明けの出走馬と比べて、相対的に休み明けが特にプラス材料というほどでもない。

 また集中力を活かすには有馬記念のように内枠が望ましく、外枠では前走の日経賞同様、集中力を活かす間もなく、馬群には入れずに終わってしまう可能性を否定できない。

 アスカクリチャンはどうか?

 やはり同馬も集中力を活かすC系。

 前2走は、外枠にも関わらず、騎手がその性質をよく理解して意識的に最内に潜り込んだ為に好走した。今回は中枠だが、乗り替わって、前走同様に騎手が最内に拘って乗ってくれる保証はなくなった。

 それに連続好走でストレスがある状態で、延長の急坂中山というのは、同馬の体力を考えると少し酷だ。

 強い相手に怯まないタイプだけに、相手強化の多頭数は大歓迎だが、以上を考えるとやはり押さえの1頭が妥当だろう。

 ということで、人気馬には、本命にしたいような馬はいなかった。かといって、人気薄も積極的に買いたいとまでいえる馬もいない。

 そこで、オールカマーのレース質をもう一度考えてみることにした。

 タフなレースになるが、近走で速い流れか短い距離で活性化されている馬が有利なレースがオールカマーだった。

 また差し競馬になった場合は、タフな競馬特有の現象として、先行から差しに回る位置取りショックが有効になる。

 以上に当て嵌まる馬を見渡してみると、1頭浮かび上がってきた。

 馬柱を見て、最初に切った1頭、メイショウナルトだ。

 前走が忙しい小回りの2000mなので、活性化度合いは抜群。前走が3角3番手と、武豊にしては早仕掛けなのも実に良い。重賞未勝利なので何が何でも勝たないといけないという思いと、小回りという意識が、仕掛けを早めたのだろう。

 今回はメンバー的にも、ペースが速くなるのは明白だし、小回りといってもローカルでなく中山だ。それほど仕掛けを急ぐ必要もない。

 さらには、ここ2戦2000mで結果を残してきた馬というのもポイントだ。距離が長くなって、平坦から急坂になる今回、騎手がスタミナ面に不安を感じて仕掛けを遅らす可能性が高い。

 以上の状況を考え合わせると、武豊得意の、前走より仕掛けを遅らせる「差しに回る位置取りショック」を掛ける可能性は、90%を超えて、ほぼ間違いないのでは?と思われた。

 これはMでは「意識的な位置取りショック」と呼ばれ、非常に成功確率が高いショック療法になる。

 しかもこのレース自体が、差し競馬の場合、先行から差しに回る位置取りショックが有効なレース質なのだから、尚更有利だ。

 唯一、そして最大の問題は、心身疲労だろう。

 これまでも再三書いてきたように、ハーツクライ産駒は疲労耐久力が低い。

 前走レコードで初重賞勝ちを収めて、心身疲労が出ないわけがない。

 ただし、今回は中6週開けている。

 また、実際前走の疲労は、単純な肉体面でも分かりやすい形で出たらしく、疲労を取ることを念頭に調整してきたという、念入りな調教過程だった。それでいて、それほど調教ピッチを緩めてもいない。

 この調教時計のパターンなら、疲労は多少残っているものの、致命傷にならないレベルになっている可能性が高いと判断して良いだろう。

 精神疲労は心配だが、2走前まで準OP、4走前には500万を走っていた馬で、今回の出走馬の有力どころの中では、むしろ蓄積疲労は少ない。

 ということで本命にした。

 ところが、当日問題が発生したのである。

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。

C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。

L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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