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差しに回る位置取りショックの威力

  • 2013年10月09日(水) 18時00分
 先週はオールカマーのメイショウナルトに発生した問題の話で終わった。時が経つのは早いもので、一つのレースを掘り下げて解説しているうちに、競馬は先にどんどん進んでしまう。

 オールカマーの翌週、GI第一弾のスプリンターズS、そして先週の京都大賞典と、今回のオールカマーと同じM的なポイントが発生したので、それもこの後、ついでに見ておこうと思う。

 さて、メイショウナルトだが、当日馬体が4キロ減ってきたのである。

 これは良くない。

 レース間隔を中6週とたっぷり取っていることから、疲労が抜けるのを期待したのだが、間隔開けて4キロ減で、デビュー当時よりも減っていた。これは体力で押すのが基本のハーツクライ産駒にはマイナスだし、疲れやすいハーツクライ産駒における最大の問題点だった、前走時の疲労が残ってしまう可能性が出てきた。

 しかしレースでは、武豊が、私の期待したとおりの、前走先行から6番手と差しに回る位置取りショックを仕掛けてくれたので、なんとか連対できた。

 厳しい流れを差しに回る位置取りショックは、再三書いてきたように、ショックとして優秀なばかりでなく、体力切れを補う効果がある。前走と違って前半付いていかないことで、後半が体力的に楽に感じるという効果だ。

 このため、厳しい流れの差し競馬では、差しに回る位置取りショックの差し脚が、前走差している差し馬が差す脚を上回ることが多いのである。

 その体力カバーの位置取りショックをしたので、何とか2着をキープできたわけだが、1番人気のダノンバラードも、前走2番手から4番手に回ることで、何とか3着をキープした。これが前走と同じ2番手からの競馬なら、流れに飲まれて5着前後だったろう。

 ただ、それでもメイショウナルトの位置取りショックは、馬体減りによる体力低下を補うには、やり方が甘かったのだ。

 勝ったヴェルデグリーンは、前走8番手から、今回13番手と、5列も後ろに下がる追い込みに回る位置取りショックを仕掛けてきたのである。

 しかも同馬は、3走前には先行していた馬だ。したがって、この追い込みに回る位置取りショックは、より高い効果を生む。

 ましてや2走前が準OPだった鮮度馬だ。タフなレース質の差し競馬になった場合、鮮度馬が前走より後方に回る位置取りショックを仕掛けたら、その効果は倍増される。

 この差し脚を封じるには、メイショウナルトは10番手くらいからの位置取りショックを仕掛ける必要があったが、今まで追い込んでいない馬の内枠で、それをやるのはリスクが高く、人気馬である以上、あれ以上の位置取りショックはさすがの武豊でも無理であり、最善の騎乗だったといえるだろう。

 その翌週、スプリンターズSも似たような現象が起こった。

 ハイラップになって、体力を使う消耗戦になったのだ(GIのスプリント戦としては普通のペースの範疇ではあったが)。

 こういうレース質では、逃げ馬が気分良くスイスイ逃げた場合、それをごちゃつきながら追い掛けた組が精神的に苦しくなって、相手には差し馬が来ることが多い。

 実際、勝ったロードカナロアは前走先行から差しに回る位置取りショックだった。

 断然人気だったが、仮に前走と同じ先行策を取ったら、まず勝てなかった。

 そして3着に来た15番人気マヤノリュウジン。一回叩いて、休み明けだった前走の太目が取れてきたこともあったが、やはり前走3番手から5番手へと、差しに回る位置取りショックが効いたのだった。仮に前走と同じ先行策なら、6着くらいだったろう。

 もちろん、3走前まで準OPだったという鮮度も効いた。ハイペース激戦の差し競馬になったときは、「鮮度があって差しに回る位置取りショックを仕掛けた馬が有利」というMの基本を、痛いほどに思い知らされたレースになった。

 ちなみに私が、前走先行から差しに回る位置取りショックを仕掛けるのを狙って本命にしたサクラゴスペルは、当日12キロ減。この時点でほぼ終わった。5歳馬が新馬時よりも12キロ減って、遠征でもなく中4週開けてるのに前走連対した時よりも12キロ減では、体力切れを起こす。

 その体力が切れ掛かった状態でも、前述オールカマーのメイショウナルトのように差しに回る位置取りショックなら、体力ロスを最低限に抑えられて好走出来たのだが、ハイペースを先行する競馬では、体力切れは顕著に現れる。

 しかも逃げ馬以外では、最下位のフォーエバーマーク始め先行馬壊滅のレースになっては、体力切れは隠しようがなかった。

 そして先週の京都大賞典。このレースのアンコイルドも全く同じ形だったのである。

 つづく

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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