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本場かネットかの割り切り

  • 2013年10月11日(金) 18時00分
 先週のことになるが、10月2日に行われた東京盃はタイセイレジェンドが、翌3日に行われたレディスプレリュードはメーデイアが、それぞれ1番人気にこたえて勝利。ともに完勝といえるレース内容で、初の金沢競馬場での開催となるJBCでは、別路線からよほどのビッグネームの参戦でもない限り、JBCスプリント、JBCレディスクラシックでの1番人気は間違いないのではないだろうか。

 その東京盃とレディスプレリュードは現地で見たのだが、驚いたのは大井競馬場の入場者の少なさだった。ダートグレードでなくとも重賞が行われる日であれば、メインレースの馬券をパドックを見てから買おうと思えば、ゴールに近いL-WING・1階あたりの馬券発売機は何人かずつの列ができるのだが、この2日とも、まったく列ができなかったのだ。東京盃の日は昼間に雨が降っていたので、天候的なことかとも思ったが、好天だったレディスプレリュードの日はさらに少なかった。

 入場人員は、東京盃の日が6,580人で、レディスプレリュードの日が5,742名。ダートグレードの日に1万人を割るどころか、5千、6千人という数にはあらためて驚いた。

 主催者に理由を聞いてみると、時期的なことなのではとのこと。ちなみに前年同レースの日の入場人員は、それぞれ6,906人、5,935人だった。今年より少し多かったとはいえ、それほど変わっていない。ナイター競馬で夏が過ぎてしまうと……なるほど、そんなものなのかなあ。

 それでもわずかではあるものの、馬券の売り上げは前年よりアップしていたという。JRAのIPATで地方競馬の馬券が買える『地方競馬IPAT』は、ちょうど昨年の東京盃の日から始まっているので、そうした条件は同じだ。

 競馬に限らず、他の公営競技も含め、売上げがどんどんネットにシフトしていることは確か。今や南関東でも場外発売(ネット・電話投票も含む)の割合が全体の90%近くに達し、ネット・電話投票だけでも全体の40数%になっている。

 地方競馬の中でも場外やネットの割合が突出しているのがホッカイドウと高知で、ホッカイドウ競馬では場外の割合が95%を超え、ネット・電話投票も全体の60%以上。高知ではネット・電話投票だけで75%ほどにもなっている。ただホッカイドウ競馬は、1場開催となった門別競馬場がもともと立地的にも場外発売に頼るもので、スタンドもそれほど大きくない。高知競馬は、ネット発売に馬券売上げの活路を求めるための通年ナイターへの移行。それゆえ、ホッカイドウ、高知でのこうした傾向は当然の結果とも言える。

 一方で、首都圏にある南関東、特に大井競馬場は、入場者を増やすため、開催ごとにさまざまなイベントが行われ、電飾などもすばらしい。しかし人が入らないのでは、そうした場内でのエンターテイメント系の仕掛けも無駄になってしまう。

 思うに、夏休み中の、特にお盆前後の開催や、年末の有馬記念後の東京大賞典を中心とする開催など、間違いなく人が入る時期はさらに入場を増やせるような仕掛けを大々的にやって、逆に何をしても人が入らないような時期は思い切って場内ではイベントなどをやらずに、ネットで馬券が売れるような仕掛けに力を入れる。今後限られた予算の中では、そうした思い切った割り切りも必要なのではないだろうか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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