オークス馬メイショウマンボ(父スズカマンボ)が見事に2冠達成。イレ込みを見せ、まだ全体に危なっかしい印象を与えたオークス当時とは、まさに一変。体つきは一段と力強くなりながら、逆に与える印象はシャープだった。パドック、馬場入りの際にもオークス時とは比べものにならない落ち着きを示し、馬自身もコンビの武幸四郎騎手も、自信にあふれる2冠達成だった。
これで、1996年から牝馬3冠目にあたるGIとして生まれた「秋華賞2000m」を制したオークス馬は、1997年メジロドーベル、2003年スティルインラブ、06年カワカミプリンセス、10年アパパネ、12年ジェンティルドンナ、そして今年13年のメイショウマンボ。計6頭となった。同じように、3冠牝馬を含む「桜花賞→秋華賞」の連勝馬も、18年間で6頭である。
また、「桜花賞最先着馬対、オークス最先着馬」の対決とすると、桜花賞1600mと、オークス2400mのちょうど中間の距離に相当するこの秋華賞2000mは、3冠牝馬の誕生した年を別にして、オークス最先着馬のほうが1-2歩リードすることになった。
かつて、牝馬3冠目に相当した2400m当時の3歳限定「エリザベス女王杯」は、距離がオークスと同じ2400mなのに、20回のうち、オークスとの連勝馬は3冠牝馬となった1986年のメジロラモーヌただ1頭だけ。対して、桜花賞とエリザベス女王杯を制したのは、1977年インターグロリア、80年ハギノトップレディ、そして3冠のメジロラモーヌ。
エリザベス女王杯2400mは、最初の1冠1600mの桜花賞との結びつきのほうが強く、それは「桜花賞最先着馬と、オークス最先着馬の対決」としてカウントしても、かなり優勢なのは桜花賞のほうだった。
これは、皐月賞2000mの勝ち馬(最先着馬)と、ダービー2400mの勝ち馬(最先着馬)が、菊花賞3000mで対決した場合と同じ図式だった。近年でもダービーを負けた皐月賞馬ゴールドシップが、菊花賞を勝って2冠馬になり、2000年の皐月賞馬エアシャカール、1998年の皐月賞馬セイウンスカイもダービーは負けても、見事に菊花賞を制して2冠馬となったように、最初の1冠2000mを制した馬が、距離はちがっても3000mの菊花賞馬となるケースが圧倒的に多い図式と同じ。知られるように「ダービー→菊花賞」の2冠馬は、クラシックの形が違う時代の牝馬クリフジを入れてさえ、1973年のタケホープと合わせ2頭だけ。しかし、「皐月賞→菊花賞」の2冠馬は史上8頭にも達する。
桜花賞とオークスの関係も、3冠目のエリザベス女王杯が長距離2400mだった当時は、皐月賞とダービーの関係と同じだったのに、2000mの秋華賞が生まれてからは、なぜか、オークス組のほうが3冠目の成績で上回るように変化しているのである。
今年、菊花賞は、皐月賞の最先着馬も、ダービーの最先着馬も同じエピファネイアなので、どっちが強いなどといわれることはないが、菊花賞が終了したら、牡馬牝馬をあわせた3歳馬の3冠の流れを整理し直してみよう。
秋華賞2000mのレース全体の流れは「58秒9-59秒7」=1分58秒6。全体にバランスのとれた前後半になったから、ペースによって有利不利の大きくなりがちな京都内回りの2000mとすると、力通りに結果がもたらされる流れだった。それもあって、1-3番人気馬は持ち味や戦法は異なっても、上位4着までにおさまった。順当な秋華賞だったろう。
勝ったメイショウマンボは、外枠が大きなロスとはならず、中団に近い後方を楽に追走できる形になったのが第一の勝因。スタートで出負け気味だったスマートレイアー、ローズSよりは前につけることになったデニムアンドルビーより前だった。よほどの乱ペースにならない限り、京都内回りの2000mの多頭数では、後方追走になるほど抱える問題は大きくなる。
ぴったりそれに当てはまってしまったのがデニムアンドルビーだった。前を行くのがメイショウマンボだから、最初から(自分から)早めにスパートしなければならない立場に立たされてしまっている。前後の位置関係はオークスと同じ。しかも、京都内回り2000m。メイショウマンボの動きに合わせる余裕はなかったろう。ダッシュつかず、出負けの形になったスマートレイアーは、こうなるともう中途半端に途中で脚を使いたくないから、デニムアンドルビーのスパートを確認できる位置であえて動かなかった。前にメイショウマンボ、後ろにスマートレイアー。あまり歓迎したくない位置取りになったデニムアンドルビーは、悪いことに、最初から自身の行きっぷりがもっとも良くなかった。
力強い脚さばきで、しっかり歩けたデニムアンドルビーは、ローズSを激走した反動や疲れはないと映ったが、早めに自力で「メイショウマンボを交わしに出ないことには…」の立場(1番人気)とあって、自分のリズムで気分良く追走できた時間が、有力馬の中でもっとも短かったのだろう。まして、最初から行きっぷり自体が思わしくない。3コーナー手前から外を回ってスパートのまくりをかけ、それで差し切るのは、こういう息の入れにくい平均ペースだと、完全に力量が一枚上でないと無理。4着に終わったのは、こと京都内回り【0-1-0-1】は、自分の持ち味を100パーセント発揮しにくい条件ということもあった。1番人気だったが、メイショウマンボ、スマートレイアーより総合能力上位ではなかったともいえる。
スマートレイアーは、予想外のスタートとなって、腹をくくって後方追走になった時点で、武豊騎手は、本当は負けを覚悟したと思える。だから、デニムアンドルビーのように強引にスパートしては出なかった。京都内回り2000mで同じような力量の馬がいて、なおかつその馬にちゃんとレースをされてしまっては、9割方は負けであることを知り尽くすコース経験の差である。
内田騎手のデニムアンドルビーと同じように3コーナー過ぎから外を回ってのスパート開始だったように見えるが、ひと呼吸も二呼吸も遅らせてのスパートであり、かつ、そこでエンジン全開の乗り方ではなかった。覚悟したようにやっぱり、負けた。メイショウマンボにちゃんと能力全開の騎乗をされてしまったからである。
メイショウマンボは、一旦はデニムアンドルビーに並ばれ交わされかけたようにも映ったが、4コーナーがゴールではない。明らかに武幸四郎騎手のほうが落ち着いていた。その点でも今回はオークス以上の完勝だったとしたい。
キャリアを考えると、メイショウマンボと、スマートレイアーが、この時点の3歳牝馬の中では1-2歩リード。デニムアンドルビーは春からの成長力でちょっと見劣る心配がでてきた。
うまく流れに乗ってあまり外を回らなかったリラコサージュ、ツボにはまれば大逆転の戦法をとったリボントリコロールは、この着差だから大健闘だろう。
有利不利の比較的少ない流れと、全体の走破時計を考慮すると、伏兵人気になったエバーブロッサム(2回の連続遠征は不利か?)、ローブティサージュ(ウォーエンブレム産駒は不振期が長い)、ティアーモ(力は出し切った)あたり、そして桜花賞上位グループは、3歳の秋になった時点で上位の人気馬3頭とかなり総合力の開きを否定できないのが、この世代の牝馬の勢力図だろう。