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秋華賞で何故リラコサージュをMは指名したのか

  • 2013年10月16日(水) 18時00分
 今週の秋華賞では、15番人気だったリラコサージュを本命に予想して3着に激走し、かなり儲けることが出来た。また府中牝馬Sでは、3連複万馬券を3点目で的中させた。

 今までずっと書いてきたことだが、特に重賞では、「人気薄であればあるほど、論理的な理由がなければ来ない」という現象がある。実際、重賞で単勝何十倍もの超人気薄を本命にすることは、比較的穴予想の私でも滅多にない。だからこそ、その滅多にしない全くの人気薄狙いのときに、様々な物語を残してきたのだ。

 そして今回の単勝万馬券リラコサージュ本命も、もちろんMで論理的に導き出された結論であった。

 今回は、先週の続き京都大賞典のアンコイルドについて詳しく書く予定だったが、そこにある問題は、秋華賞のリラコサージュも全く同じだ。

 そこで今週は、その穴構造の全てを、併せて見ていくことにしようと思う。

 まずは京都大賞典で、単勝50倍の人気薄で2着に激走したアンコイルド。

 前走14番人気で3着に大激走しているので、ストレスがあるのでは? と思われる方も多いだろう。実際、多少はある。ただそれはストレスではなく、主に疲れの方だ。

 前走は2走前2着激走後の3着。着順を落としているし、3着でも大差負けだ。前走時よりは遙かに精神的ストレスは薄い。

 問題は人気薄で重賞を2連続で好走した蓄積疲労の方だろう。ただ今回の場合は中6週開けているので、直接的肉体疲労はある程度緩和されている。

 この馬で注目すべきは、今回の条件に対する鮮度だ。

 中央の関西圏重賞を使うのは今回が初めて。しかも、2400m以上を使うのも初めてだ。

 生涯鮮度、条件鮮度がかなり高い。

 表路線の長距離重賞を走り続けてきた馬が多い今回のメンバーの中で、これは明らかに精神的アドバンテージになる。

 その反面、もちろん初距離の2400mというのは、精神面でプラスだが、体力面では不安材料でもある。

 同馬はここ2走先行していて、今回はメンバー的に先行馬が多い。初距離で厳しい流れを、しかも内枠から揉まれながら先行した場合、体力的にきついので、疲労の影響が出る可能性が大きいのだ。

 この先行してタイトな流れを揉まれ込む展開だと、大丈夫だろうと先程結論を出した、2走続けて激走しているという疲労問題が、改めてクローズアップされてしまう。

 タフな競馬になりそうなメンバー構成で大切な鮮度の高さと、厳しい流れを先行して揉まれ込まれる体力面の不安。

 この2つを天秤に掛けたとき、相手の1頭という評価が妥当という結論に至り、4番手に予想した。

 そして迎えたレース。

 なんと、アンコイルドは思い切って追い込みに回る位置取りショックを施したのだ!

 これは読めなかった。

 この作戦が、全ての問題を解決する一手だというのは、先週までの連載を読んでいる読者なら、説明するまでもないだろう。

 レースも差しに回る位置取りショックにはお誂え向きの差し競馬になったので、待ってましたとばかりに7番人気2着と激走したのである。

 タイトな流れの差し競馬における、「先行から差しに回る位置取りショック」の威力をまざまざと見せつけたレースとなった。

 そして今週の秋華賞。メンバー的に前に行く馬が多い。

 レースがタイトでハードになればなるほど、競馬は論理的に決まる。

 内回りの多頭数で先行馬が多数。

 騎手の好きな位置取りが取れるため偶然性に作用されやすい、広いコースの単調なスローと違って、流れに逆らって騎手が好きな位置取りで乗ることが出来ない、逃げ場のないタイトなハイペースの可能性が高い。

 騎手の位置取りという恣意の許容範囲が極めて狭い、最も論理性が活きる、まさにMの舞台だ。

 ハイペースの激戦になって踏ん張る必要が出てくれば、ストレス馬は危ない。

 一番レベルが高く重要なトライアルであるローズSを追い込んで勝ってしまった、Mの典型的ストレスのあるデニムアンドルビーは危なくなったわけだ。

 もちろん、ローズSを追い込んで2着したシャトーブランシュも危ない。

 ハイペース追い込み競馬になるかもしれないのに、前走追い込んで好走した馬が危ない。

 これがMの面白さであり、美しさでもある。

 仮に今回が追い込み競馬であっても、ハイペース激戦になった場合、前走で追い込んで好走した馬は危ないのだ。

 通常時で5馬身くらい離す能力差があったり、単調な流れでの上がりだけの追い込み競馬になればまだ良いが、今回のケースがそうでないことは、もはや説明するまでもないだろう。

 では、ハイペース激戦になった場合の、Mの基本とは何だったか?

・鮮度と心身疲労(ストレス)の有無
・位置取り、距離変更などのショック
・タイプ判断(馬群に入らない外枠の追い込み以外はCないしS系が有利)
・ストレスを受けない程度の、ほどよい距離感を持ったハードな記憶(経験)

 以上が、主なものとして挙がってくる。

 このどれもが、毎月のように実例とともに解説しているMのポイントになるわけだが、今回の秋華賞も、その全てが一つの筋道へと勢いよく収斂していったのだった。

 つづく

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。

C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。

L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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