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因縁めいたハーツクライ産駒ジャスタウェイの天皇賞勝利

  • 2013年11月01日(金) 12時00分
 ハーツクライを少し甘く見ていた。

 これまで4世代を送り出して、JRA重賞の勝ち馬はウインバリアシオン、ギュスターヴクライを双璧に9頭。まだ2歳戦は始まったばかりで実質は3世代だから、この9頭は立派な内容である。

 ただ、ウインバリアシオン(日本ダービー2着、菊花賞2着、天皇賞・春3着)、キョウワジャンヌ(秋華賞2着)、レッドセシリア(阪神JF3着)の3頭がGIで好走しているものの、ジャスタウェイが先週の天皇賞・秋を勝つまで、GIを勝った産駒は皆無だった。

 GIII、GIIでは好勝負するが、GIはどうも頼りなく、成長の上積みにも乏しい。それがハーツクライの血統イメージだった。先のキョウワジャンヌ、レッドセシリアも、その後は伸び悩んでGIIIすら勝っていない。

 ジャスタウェイにしても昨年2月のアーリントンCを勝って以降、ずっと重賞を勝てないでいた。デビューが早く、新潟2歳S2着の馬だから、何となく早熟の匂いがしたものである。

 GIを勝つ底力を秘めているなど、考えもしなかった。ところが、どうだろう。ジェンティルドンナを抜き去ると、ゴールでは4馬身も突き放す圧勝。1年8か月ぶりの勝利で、初のGIのタイトルを手にした。

 トウケイヘイローがハイペースで逃げ、それをジェンティルドンナが追いかける展開。いかに女傑といえども、この流れではさすがにゴール前が苦しい。展開の利があったのも確かだろうが、正攻法でもぎ取った強い内容である。

 ジャスタウェイの競走成績を見ると、毎日王冠までデビューから15戦して8戦が、メンバー最速の上がりを記録している。瞬発力勝負だけなら、現役屈指であったことは間違ない。しかし、勝つところまでは想定していなかった。

 思えばハーツクライは、有馬記念で無敗の三冠馬ディープインパクトに初黒星をつけ、初GI制覇を果たした馬だ。

 息子のジャスタウェイも、ディープインパクト産駒の1番人気ジェンティルドンナを退け、ハーツクライ産駒待望の初GI制覇を果たした。何やら因縁めいている。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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