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記憶の新しいうちにみやこSを題材にダート重賞を解説

  • 2013年11月06日(水) 18時00分
 先週の重賞はみやこSで馬単50倍を当てたのだが、ダートの重賞は今まであまり解説してこなかったので、記憶の新しいうちにMのポイントをおさらいしておこう(また続きの話が後回しになってしまうが)。

 本命にしたのはブライトライン。フジキセキ産駒で、ダートでは珍しいC系血統になる。C系なので多頭数内枠の適性が高く、特別内枠向きというわけでもないS系の多いダート戦では、内枠が有利な流れになったときに、相対的に有利になりやすい(京都中長距離なので、内枠が苦手なL系も出てくるので余計だ)。

 京都は馬場が軽く、1800mの重賞クラスになると外をずっと回ると間に合わなくなるケースも多いので、物理的にも内枠が有利なケースが多い。今回のメンバーは前に行く馬が少ないので、そういう外差しが間に合わない流れになりそうなので、C系の内枠=ブライトラインにはかなり有利になりそうだ。また、前走不利があって力を出し切っていないのも、体力的にも有利だ。

 一般的な視点から見ても、着順的に好調と考えられ、ダートの消化数も少なく上がり目もまだあるので、1番人気になっても良さそうだが、延長の1800mが嫌われての2番人気だった。

「延長1800m」に関しては、芝の延長2000mで未勝利勝ちを飾っていること、「先行馬の距離延長」というMの順ショックになっていること、間隔開けて疲れが無いので体力切れのリスクが少ないこと、京都の体力をあまり要しない軽い馬場であることなどを考慮すれば、たいした問題ではない。

 また、人気馬に怪しい馬が多い。

 3番人気ナイスミーチューは疲れやすいキングカメハメハ産駒。休み明けの鮮度で、ハンデ戦を57.5キロ背負ってクビ差の2着だったが、そのダメージはかなりあるだろう。

 別定戦になって1.5キロ減ることが好材料視されていたが、むしろ重い57.5キロを背負って好走したことの方が心配だ。単純に物理的な条件が有利になったから、精神的に有利になるわけではないのだ。

 4番人気グレープブランデーも休み明けから走れるタイプで、前走地方GI4着。凡走でもないがGIでは疲れが残るし、好走でもないので調子が良いとも思えない。

 そんな状態の休み明け向きの馬が、中2週という短い間隔で急激に良くなる可能性も、あるいは疲労が残らない可能性も、両方ともそれほど高くはない。

 5番人気ケイアイレオーネは前走初古馬戦の鮮度を活かして5番人気で激走して、しかもMで一番ストレスが残る内からの追い込みで勝った馬だ。今回は鮮度低下とストレスのダブルパンチが気になる。

 結局良い馬が他にいないので、相手は休み明けでリフレッシュして、スペシャルウィーク産駒で馬群を厭わないこともあり内枠も合うローマンレジェンドという、1番人気対抗の、普通の結論に至ってしまった。

 7番人気インカンテーションは古馬2戦目とまだ鮮度が高く、前走は6着と凡走してストレスも無い。M的には買い頃だ。

 気になるのは京都を一回も使っていないので、京都という特殊コースに対する適性が憶測の域を出ない点が挙げられる(シニスターミニスターのデータが少なく、タイプが完全に把握できていないのも気になる)。

 もう1つは、京都1800mのダート重賞という特殊性だ。特に高速ダートになった場合は、レース質が極めて軽くなる。軽くなるとレース中の摩擦が薄まりやすい。

 薄まるとどうなるかというと、踏ん張る必要がなくなってくるので、ストレスの影響を受けにくくなる。

 結果、前走好走した馬がそのまま好走する確率が上がり、タフなタイプや鮮度の高い馬が巻き返す確率が下がるのだ。

 したがって、京都のダート1800m重賞は、前走好走して、勢いのある方が比較的無難に走りやすい。

 そういう意味でも、1番人気3着と人気を裏切ってストレスが薄まりながらも、連続3着以内を継続中と、まだ勢いを保っているブライトラインのような馬は絶好の狙いとなる。

 ところが、このインカンテーションの6着は、どう判断して良いか迷うところだ。京都の摩擦のないダートを前に、少しリズムが殺されすぎていないか?である(それとは別に道悪の軽いダートの古馬相手で凡走したので、古馬の強豪相手での京都だと相対的にどうなのかという不安も多少出てきた)。

 一体、どのくらいストレスを勢いが押さえ込めるのか、あるいは勢いを失った馬が巻き返すのに必要なのは何か?位置取りショックなのか、生涯鮮度なのか、距離変更鮮度なのか、あるいは別の何かか?

 これはそのレースの位置づけによって、微妙に変化する。

 共通するものは存在するのだが、その比重は、レースの施行時期、レベルなどによって、変動していくわけだ。そういうときに役立つのが過去の傾向である。

 私が過去のデータを使うときには、主にそういった、そのレースが要求する固有のレース質を調べるのに使う。

 では、みやこSの場合はどうか?というと、まだ始まって4年目なので、そういう細かなレース質を調べるにはサンプルが少なすぎる。

 過去3年の短い間で4着から巻き返した馬はいるので、巻返しが効かないレースではないことは分かるが、やはり京都ダート重賞らしく、ストレスがあってもある程度は好調なタイプが有利なことも確かだ。

 6着で、2、3走前には好走している状態なら、レース質的には大きな問題にはならないといったところか。

 ローマンレジェンドも6着後だし、そもそも好調でかつ今回きついストレスが無い馬というのが、先程見たようにあまりいないので、これでも2、3着の可能性は十分ある。

 また前走3着好走とはいえ、グランドシチーの4着→5着→3着のような煮え切らないリズムの馬よりは、勝ったり凡走したりと、メリハリのあるリズムの方が、こういうスピード優先のダート重賞ではよりベターでもあるし、過去3年を見ても停滞したリズムの馬は走っていない(リズムの躍動感については何度か書いてきたが、また折に触れて書いていきたいと思う)。

 さらには、10年に前走4着から巻き返して3着した9番人気サクラロミオは、2走前が準OPだった。古馬OP鮮度さえあれば、実力が微妙な人気薄でも、4着以下から巻き返す可能性があるレース質と判断できる。古馬2戦目のインカンテーションも、そう考えれば悪くはない(鮮度があることが、巻返し要因にはならないレース質の重賞も、そこそこ存在する)。

 以上の理由で、相手の一頭評価が妥当と判断して予想し、4点目での馬単50倍という結果に終わった。

 もう少し上位に挙げて2点目くらいで当てるべきレースだったかもしれない。やや、レース質の読みが中途半端だったという反省が残る結末だった。

 それと同時に、データの少ないシニスターミニスターに関して、ある程度の情報を収集できたレースでもあった(シニスターミニスターについては、今度発売の血統辞典にも載せたが、また後で改めて解説しておきたいと考えている)。

※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。

C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。

L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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