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GIでも化ける可能性がある渋いマイナー配合のアスカクリチャン

  • 2013年11月08日(金) 18時00分
 アルゼンチン共和国杯を勝ったアスカクリチャンは、2008年の「北海道オータムセールサラブレッド1歳」に出場し、210万円(税込)の安値で落札された馬だ。

 このセリは、売れ残って後がない崖っぷちの馬が多く集う。例外もいるが、そんなセリだから血統もマイナーな馬が多い。

 ところが、これが意外に掘出し物の宝庫。アスカクリチャンのように出世する馬がいるから面白い。210万円の馬らしく、血統は渋すぎるほど地味だ。

 父のスターリングローズは2002年JBCスプリントの覇者。他にダートのGIII、GIIレースを5勝しているが、GI勝ちはこれ一つだけ。種牡馬入りして初年度、2年目に60頭台の配合牝馬を集めたものの、地方競馬御用達といった感じだった。

 確かにアスカクリチャン以外は、賞金の安い福山、佐賀、金沢といった地方競馬でもっぱら走っている。

 母の父ダイナレターも最優秀ダートホースに輝いたが、種牡馬成績は不振。中央競馬でオープンに出世したのはマイネルエアメールのみ。それに次ぐのアスカクリチャンの母ローレルワルツで、ダート1700mの特別戦を勝っている。しかし、これ以外に目立った産駒はいない。

 この配合で芝の活躍馬が出たのも不思議なら、長距離のGIIを勝ったのも不思議。サンデーサイレンスの血も入っていない。偉大な血の協力を仰ぐことなく、しかもダートの配合で、芝GIIのアルゼンチン共和国杯を勝つ馬が出たのだからすごい。

 もっとも、母系のベース自体はアスカクリチャンの活躍が納得できるもの。母ローレルワルツの半兄には、シグナスヒーロー(日経賞2着、アメリカJCC2着、ステイヤーズS2着)がいる。祖母の父マルゼンスキー、曾祖母の父デルタジャッジという種牡馬の配列も一流だ。

 渋いマイナー配合だが、この先、GIでも化ける可能性を残している。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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