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ハッピーなJpnI制覇

  • 2013年12月20日(金) 18時00分


◆地方競馬全体をハッピーにした快勝

 18日に行われた全日本2歳優駿でのハッピースプリントの強さには驚かされた。2着スザクとの着差は1馬身半だったが、完勝といえるレース内容。勝ちタイムの1分40秒4も、中央との交流になった1997年以降では、ラブミーチャン(2009年)の1分40秒0に次ぐ2番目というものだった。

「1コーナーで3番手につけられたので、あとは馬の力を信用すれば、だいたい勝てるだろうと確信して乗っていました」と宮崎光行騎手。田中淳司調教師は、「3コーナーでほかの馬の手が動いているのに、この馬だけ持ったままだったんで、これはだいじょうぶじゃないかと思いました」。レースの終盤を迎える前から勝利を確信していたことからも、その強いレースぶりが伝わってくる。

 さらに田中調教師は、「北海道の2歳は強い強いと言われながらGIは勝ってないんで、なんとかと獲りたいと北海道のみんなが思っていたと思います」とも。

 たしかにホッカイドウ競馬でデビューして、その後に移籍した中央や南関東で活躍した馬はたくさんいるが、中央・地方で統一格付けが行われた1997年以降でホッカイドウ競馬所属のままGI/JpnIを勝ったのは、コスモバルクによるシンガポール航空国際Cしかない。この全日本2歳優駿では2001年に北海道のプリンシパルリバーが制しているが、そのときはまだGII格付けだった。

 今回のハッピースプリントの勝利は、ホッカイドウ競馬のみならず、地方競馬全体としても、まさにハッピーな話題となった。

 昨年末にフリオーソが引退し、今年はラブミーチャンも引退。地方競馬にスターと呼べるような馬がいなくなってしまっていたという状況でのJpnI制覇だ。

◆2歳での年度代表馬選出も

 レース前から、いい勝ち方をすれば来年はドバイ遠征ということも話し合われていたとのこと。それだけ陣営の期待も大きく、また自信を持って臨んでいたのだろう。もしドバイ(UAEダービー)遠征が実現すれば、地方馬によるドバイ遠征は2005年のアジュディミツオー(ドバイワールドC・6着)以来9年ぶり。海外遠征は、グレード格付けがない今年の大井とソウルとの交換競走を別とすれば、3年連続でシンガポールに遠征したコスモバルク(最後は2008年・6着)以来6年ぶりとなる。

 そしてNARグランプリの表彰ということでも明るい話題だ。今年、ここまでに地方馬でグレードのつく重賞を勝っていたのは、ハッピースプリントの北海道2歳優駿のほかには、ラブミーチャン(東京スプリント、クラスターC)、セイントメモリー(オーバルスプリント)と、いずれもJpnIII勝ちまで。GI/JpnIでは、ジャパンダートダービーでのインサイドザパーク、JBCクラシックでのジャングルスマイルと、いずれも4着というのが最高の成績。JpnIII勝ちまでの中から年度代表馬を選ぶというのでは、ちょっと寂しいものがあった。東京大賞典の登録馬もすでに発表されているが、そのメンバーで地方馬が勝ち負けに加わるというのは相当厳しいと言わざるをえない。

 2009年のラブミーチャン以来、ハッピースプリントが2歳馬による年度代表馬に選出される可能性はかなり高いといえそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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