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今年目立ったマイナー種牡馬の「下克上」

  • 2013年12月27日(金) 12時00分


◆2014年は更なるマイナー種牡馬の台頭も

 有馬記念はオルフェーヴルが8馬身の圧勝で、引退の花道を飾った。この馬の能力が傑出していることは疑いようもない。しかしこの着差は、馬全体のレベルが落ちていることの証明のようにも思う。

 今春の3歳GI戦では、ランキング下位のマイナー種牡馬に、メジャー種牡馬が苦もなくひねられてしまった。春は前年と同じくディープインパクト旋風が吹き荒れ、アユサンが桜花賞を、キズナが日本ダービーを確かに勝った。

 だが、残りの皐月賞はローエングリン産駒のロゴタイプが、オークスはスズカマンボ産駒のメイショウマンボが、NHKマイルCはスズカフェニックス産駒のマイネルホウオウが、それぞれ勝った。みなランキング下位の種牡馬である。

 菊花賞はエピファネイアが勝ったが、父のシンボリクリスエスはこれがクラシック初勝利。非サンデー系の将来を担う種牡馬とは言いがたい。秋華賞、エリザベス女王杯はともに春と同じくメイショウマンボが勝ち、ついにディープインパクト産駒の巻き返しはならなかった。

 なぜ、こんな下克上が起きたのか。その背景には社台グループが導入したチチカステナンゴの大不振がある。日本で最高の繁殖牝馬群は、社台グループが擁するサンデー系繁殖牝馬群。チチカステナンゴにはそれらが一斉に集まったが、いざ産駒が走ってみると戦力外の馬が続出。3歳馬のレベルを軒並み下げることになった。

 対するサンデー系種牡馬にも、血のジレンマが深く進行している。非サンデー系の一級繁殖牝馬に限りがあるなか、ディープインパクトに一極集中。その結果、他のサンデー系のメジャー種牡馬に、以前ほど良質な牝馬が集まらなくなった。さりとて、生まれたディープインパクト産駒がすべて優秀とは限らない。どうしてもそこに綻びが生じる。

 その間隙をぬって、サンデー系のマイナー種牡馬が浮上してくる。偉大なサンデーの血を引く以上は、メジャーもマイナーも成功の可能性は紙一重なのだ。

 2014年のクラシック戦線も、ディープインパクトを中心に回ることは間違いないだろう。しかし、少しでもつまずくと、新たなマイナー種牡馬が浮上してくることになる。下克上が今年以上に激化するかもしれない。


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次回の更新は、年明けの1/10(金)になります。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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