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時計以上に中身が濃い快勝/京成杯

  • 2014年01月20日(月) 18時00分


◆柴田大知騎手の好判断も

 今年の3歳牡馬陣は、「期待の注目馬登場!→でも次走、案外な凡走」のパターンが多く、マイル路線はべつにして、クラシック候補の台頭が遅れていた。

 そんな中、「東スポ杯快走→朝日杯FS凡走」のプレイアンドリアル(父デュランダル)が、今度はたちまち巻き返しに成功。初の東京1800mを1分45秒9でイスラボニータとクビ差接戦に持ち込んだ当時の評価を取りもどしてみせた。

 コスモバルク以降、公営所属馬のJRAクラシック競走出走はほとんど話題にならなかったが、同一年の芝の重賞を制した地方馬は、トライアルで権利を獲得しなくても皐月賞に出走できるようになっていた。所属が川崎に移ったプレイアンドリアル陣営は、控えて差す形を身につけたいが、トライアルでいきなり試みて失敗すると皐月賞に出走できなくなってしまう。

 そこで、朝日杯FSから間をあけない出走で日程はきびしくなるが、ここで控えるレースを覚えさせたい。そういう展望があって京成杯に出走する。そんな陣営の心づもりが伝えられていたが、快勝したことにより、これでスプリングSや弥生賞には無理に出走しなくてもいいことになった。もっとも、タフなプレイアンドリアルは3月9日の弥生賞(皐月賞と中5週)には出走する予定とされる。

 勝ちタイムは2000m2分01秒1だった。第3週は、時計を要して外差しばかりが決まった2週目とはまるで芝コンディションが異なることに(みんな…?)驚かされたが、2000mになっての京成杯の不良馬場を除く平均勝ちタイムが「約2分02秒0」なので、標準を上回るレベルとしていいだろう。ただ単に勝ち時計が標準を上回っただけでなく、レースの前後半1000mは「60秒6-60秒5」。レースバランス抜群。皐月賞でも再三出現するペースだったから、時計以上に中身は濃い。

 朝日杯FSのプレイアンドリアルはレース前からカッカしすぎて、少しでも落ち着かせるために返し馬も避けるほどだった。あれでは立て直しが必要かとも思えたが、移籍に伴うストレスをたちまち克服し、折り合いを覚えさせるための特殊なインターバルトレーニングも実を結んだ。デビュー以来の最高馬体重だった朝日杯FSの488キロも、急な環境の変化に気を配りすぎて運動を控えたというから、太め残りだったのだろう。

 今回はレース前の落ち着きを欠くこともなく、スムーズに返し馬に入ることができた。レースでも最初から折り合って進み、途中で外からヴォルシェーブ(父ネオユニヴァース)、あるいは人気のキングズオブザサン(父チチカステナンゴ)が動いたときにも、さして動じることなく鞍上の柴田大知騎手の「待て」の指示に従うことができた。動いたキングズオブザサンをやりすごしたあたり、柴田大知騎手の落ち着いた判断が素晴らしい。

 レースの最後の1ハロンは「12秒6」。一気に苦しくなった馬が多い中、ここで決定的な2馬身の差をつけたから、スタミナ面にもまず不安なしと思える。アドマイヤムーン、ヒシアマゾンなどが代表馬に並ぶケイティーズ(父ノノアルコ)から広がるファミリーの活力は文句なし。父デュランダル(その父サンデーサイレンス)は、たしかに自身の快走は1600m以下に集中したが、最初から最後方近くに下げる独特のレース運びで自ら大きな不利(負担)を受け入れながら、それで時計勝負の1200-1600mのGIに対応したから、ふつうのマイラーやスプリンターにとどまらないのは当然。エリンコート(オークス馬)タイプを送って不思議はないと考えたい。

 公営所属でJRAのビッグレースに挑戦をつづけるのは大変なことだが、陣営にはコスモバルクの貴重な経験があり、プレイアンドリアルの場合は、川崎に所属を変えることで各地への移動に伴う負担は軽減される。大目標のレースに狙いをしぼりたい。

◆キングズオブザサンは足踏み状態か、エアアンセムは次走の好走が求められる

 人気の中心に支持されたキングズオブザサンは、芝コンディションは大きく異なるが、「59秒5-61秒3」=2分00秒8の葉牡丹賞で好位のインで流れに乗り、はじけるように抜け出した前回のレースと比較すると、今回「60秒6-60秒5」=2分01秒1のペースで途中から気合を入れ通しのスパートになったレース内容はちょっと誉められたものではなかった。いっぱいになりながらも2着を死守した勝負根性は素晴らしいが、前回はイン追走。今回、外々と回らされたのが見た目以上に苦しかったのかもしれない。この2着の賞金加算によりクラシック挑戦はほぼ確約されたが、期待された急成長は、やや足踏み状態ではないかの印象が残った。

 新馬戦と同じく546キロで出走してきたアデイインザライフ(父ディープインパクト)は、のびのび見せるフットワークに重苦しさはなく、スケールにあふれている。最後方追走から大外に回りただ1頭だけ上がり3ハロン35秒台。ただ、先行馬崩れの流れではなかったこと。しかし、前回の超スローとはまったく異なる流れで楽な追走ではなかったから、切れが長つづきしなかった。2戦目の内容とすれば文句なしだが、この形になった1勝馬はこのあとが難しい。1800mのトライアル=スプリングSは合うとは思えない。2000mの弥生賞はめったにフルゲートになることはないが、といって1勝馬が出走できるとは限らない。500万条件、あるいは他の重賞レースでの賞金加算に出ると日程はかなりきびしくなる。陣営の悩みは大きくなった。

 人気の2戦2勝馬エアアンセム(父シンボリクリスエス)は、スムーズに好位のイン追走となった前回とは異なり、最初から馬群の中でもまれてしまった。キャリアがないだけにこの形になっては苦しい。この路線はサバイバル。皐月賞出走には次走の快走が必須条件となる。

 注目の期待馬ラングレー(父ディープインパクト)は、非常にシャープな体つき。レース内容に期待が高まったが、エアアンセムと同様、最初からもっとも苦しい位置どりになり、自身のリズムでスムーズに追撃に入る場面がまったく探せなかった。ギュイヨン騎手が中山コースに慣れていないのも痛かったろう。

 同じようにベリー騎手のテン乗りになったウインマーレライ(父マツリダゴッホ)は、気合をつけたら最初からかかってしまった。単騎免許の海外所属の騎手にワンポイントで賞金加算をゆだねる乗り代わりは、うまく出るとき大正解。はまらなければ大失敗。極端な結果におわるのは、陣営が承知だから仕方がない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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