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的場文男騎手のスゴイ記録

  • 2014年04月18日(金) 18時00分


◆地方競馬での最高齢重賞制覇

 16日に川崎で行われた東京ダービー・トライアルのクラウンカップは、単勝10.7倍の4番人気ワタリキングオーがゴール前の接戦を制した。

 鞍上は的場文男騎手。4コーナーで内を突くと先行2頭が前で壁になったが、その間が1頭分空いたところから抜け出しにかかった。しかし外にいた1番人気のサーモピレーが内に切れ込んできたため、ワタリキングオーは控えるしかなく一旦は勢いを削がれるような態勢に。そしてサーモピレーが完全に抜け出して勝ったかと思ったところ、ワタリキングオーの的場騎手は外に切り替え、あらためて追い出されると、サーモピレーをクビ差とらえてのゴールとなった。

 川崎の4コーナーはカーブがきつく、内か外かの判断が難しい。内を突くと前が詰まって抜け出すところがなくなることがあり、外を回せば大きく外に振られてしまうこともある。慣れた南関東のトップジョッキーはさすがにうまく捌くが、ダートグレードなどの交流レースでは、中央のトップジョッキーですら判断を間違って大きなロスとなる場面もめずらしくない。川崎コースの4コーナーの攻防は、よく見ていると面白い。

 しかしそこはさすがに百戦錬磨の的場騎手。今回のクラウンカップでは、内を突いた判断に加え、豪快な差し切りは、あらためてすげぇと思った。

 その的場文男騎手は1956年9月7日生まれで、いま57歳。もしかしてと思ったが、レース翌日に地方競馬全国協会のサイトでリリースがあったように、57歳7カ月は、地方競馬での最高齢重賞制覇の記録更新となった。

地方競馬に吠える

クラウンCをワタリキングオーで制し、地方競馬の最高齢重賞勝利記録を更新した的場文男騎手


 それまでの記録は佐々木竹見さんの最後の重賞勝ちとなった1999年の大井・フロンティアスプリント盃(キャニオンロマン)だろうとは思っていたが、上山の海方昭三さんが1993年に達成していた記録と日数まで同じ(57歳4カ月19日)タイ記録だったとは知らなかった。

 佐々木竹見さんの通算7153勝(うち中央2勝)は、いまだに破られていない日本記録で、現役時代は「鉄人」とも呼ばれた。しかし50歳を過ぎてからの成績を比較すると、的場騎手のスゴさにあらためて驚かされる。

 佐々木竹見さんが最後に年間100勝を達成したのは1992年、51歳の年で110勝。そして2001年7月、59歳8カ月で引退した。

 対して的場騎手は、208勝を挙げた2009年の53歳の年まで200勝超を11年続け、昨年も149勝を挙げている。今年も100勝超えのペースで勝ち星を積み重ね、もし達成すれば30年連続での100勝超となる。

 4月16日現在、的場文男騎手は通算6581勝(うち中央4勝)。何年か前、とある競馬雑誌の企画で的場騎手にインタビューしたときに、通算勝利数の“竹見さん超え”について質問すると、「無理無理」と謙遜して笑っていた。しかし今なお年間100勝超を続けていて、竹見さんの7153勝まであと572勝と迫っている。

 さらには、山中利夫さん(金沢)が2012年5月に達成した、62歳9カ月という日本での最高齢勝利記録の更新も可能ではないかと思えてくる。

 的場文男騎手には、その騎乗ぶりも、数字の記録面でも、もはや「すげぇ」という言葉しか思い浮かばない。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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