まず、2番人気に支持されつつ、前半の1000m通過56.9秒という猛ペースで飛ばし、最後は歩いて13着に沈んだローエングリンの逃げは、まあそういう強気なレース運びは理解できるとしても、不可解だった。ローエングリンが支持されたのは、あえてヨーロッパ遠征にまで出かけ、精神面の成長を促し、ときに無理なペースで行ってしまう気性の難しさを進歩させるテーマがあったはずで、この天皇賞で自身のラップ前後半が[56.9−62.4]での大失速は、記録上は史上最高のハイペースで飛ばした逃げ馬として残るが、結果、あまりにおそまつだった。
なぜ、ローエングリンが2番人気に支持されたか。それは、毎日王冠のあまりに情けないレース運びから、ゴーステディが結果はなかば度外視の逃げを打つはずで、それを離れた2番手でマイペースで進めるローエングリンの先行を推測し、それが今年、もっとも有利な立場と思えたからだ。そういう支持だった。
後藤騎手の前半56.9秒の逃げを、ローエングリンに期待したファンの一人として、認めないわけではない。自分で行く手があるのも認めるが、これはゴーステディの置かれた立場(弱気にハナを譲って、毎日王冠の流れを台無しにしてしまった以上、今度は死にもの狂いで行く)を、まったく理解していないというか、他馬の特徴や能力をまるで無視してしまった戦法で、何を理由にしようと前半1000m通過56.9秒では、結果、二ケタ着順は向正面で見えてしまった。脇役ならいいが、2番人気の主役がこれはつらい。
ペリエ=シンボリクリスエスは、もう3角手前で当面のライバル・ローエングリンを見捨てていた。ハイペース云々ではなく、まるで関係ないテレビ馬と同じだったからだ。
それでもシンボリクリスエスは、少しでもコースロスを防ぐよう3角手前でバラけた馬群のインに入り、4角でも外を回らなかった。
4歳秋を迎え、大きく成長したシンボリクリスエスには、他馬の特徴やレース運びも重々承知のペリエ騎手の乗る強みもあった。
やけにボリュームを増した馬体だが、十分にゆったりもみえたシンボリクリスエス。今後のジャパンCでも文句なしの主役となった。
ツルマルボーイは、勝ちに出たわけではないから、結果は大満足の2着だが、追い込んで届かずの2着は、ことG1の場合、惜しい2着でもなく、結果が吉だっただけの面もある。見ていて楽しいレースだったが、ペリエ=シンボリクリスエス以外は、あまり実りのない2000mだったような気もする。中身は大味だった。
有力馬の陣営が、ペリエやデムーロを呼ぶのが、改めて痛いほど理解できたのがつらい。