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年間勝鞍合わせて2451勝

  • 2003年11月10日(月) 18時29分
 晩秋から初冬の風景になってきた日高では、各地の育成牧場に1歳馬の入厩がそろそろピークを過ぎた頃である。浦河にあるBTC(軽種馬育成調教センター)界隈にも、ずいぶん多くの1歳馬が入っている。

 これから明年夏か秋まで(もちろん場合によってはもっと長引く馬もいるのだが)このBTCを利用して調教が進められる。

 「BTCニュース53号」(2003年10月1日発行)によれば、昨年度の年間利用頭数は、計2365頭。利用牧場数は66軒。延べ頭数は12万7108頭にも達する。もはや、この施設を抜きに日本の競馬を語れないほどの巨大な存在となっている。

 この施設の開場は平成5年10月。ちょうど先月で満10周年を迎えたことになる。当初の利用頭数は一日あたりわずか40頭から50頭に過ぎなかったのが、今やちょうど10倍に膨れ上がり、それにつれて周辺の景観は文字通り「一変」した。際立っているのは、この10年で民間の育成牧場がBTC周辺に激増したことである。昨年末の段階で、徒歩での利用が可能な位置にある民間の育成牧場の馬房総数は512に達するという。稼働率も高い。

 この「BTCニュース」では、同施設の利用形態を5つに分類し(A滞在型、B馬運車のみ、C馬運車&滞在、D徒歩&馬運車、E徒歩のみ)それぞれについて詳細に紹介している。

 まずAの滞在型は、12牧場が利用。BTC内にある108馬房が滞在馬のために用意されており、8牧場が遠距離から(30キロ以上)の輸送による滞在だという。平均で1頭あたり48日間ここに滞在し、調教される。昨年度の実頭数は155。

 続いてBの馬運車のみの利用は27牧場で368頭。このグループは主として近距離に牧場を持ち、調教日数も短い。トレーニングセールのための追い切りに利用するケースも多く、27軒中20軒が生産牧場との兼業という。

 Cの馬運車&滞在は、日帰りと滞在の双方でここを利用するタイプで前に挙げた馬運車のみの利用と牧場分布は似ているものの、経営形態は育成専業の割合が80%と逆転している。10牧場446頭が、平均して41日間の利用となっているためB群と比較するとずいぶん長い。

 D及びEは、徒歩&馬運車、徒歩のみ、という利用形態で、実はこの形がBTCの主流を占める。D群は9牧場、年間727頭の利用。一牧場平均で81頭に及ぶ。調教日数も平均69日あり、三ヶ月以上もここに通っている計算となる。

 E群の徒歩のみの利用牧場は8軒。669頭。やはり一牧場あたり84頭とこちらも多頭数で一頭あたりの平均調教日数もD群と同じく69日に達している。

 ここで調教された馬たちの競走成績もまた利用頭数の増加とともに年々増え続け、昨年は中央で647勝、地方で1804勝に上った。中央でのグレードレースにおける成績も昨年は計29勝に達し、一昨年より7勝も増えた。日本ダービーのタニノギムレットを筆頭にG1レースも5勝をマークし、確実に「BTC効果」が浸透しつつある。

 ただその反面、日高の他の地区にある育成牧場の中には、顧客が激減し経営難に陥っている牧場もあり、BTCの存在そのものが怨嗟の的になっているとも聞く。以前には、日高の中部と西部にも平等にBTCと同様の施設を作ってもらいたい、と要望する声があったのだが、馬券売り上げも下降している昨今の経済情勢ではそれもいささか実現が難しそうで、ますます有力馬(馬主?)の争奪戦が激化しそうな気配である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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