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繁殖牝馬売り馬情報

  • 2003年11月25日(火) 15時16分
 先月あたりより、静内町のエージェント会社L社から、FAXによる「繁殖牝馬売り馬情報」が送信されてくるようになった。先日も延々と6ページにわたり、合計69頭もの繁殖牝馬が一覧表で記載されていた。かなりの数と言っていい。

 情報は概ね次のような紹介のされ方が基本である。「繁殖牝馬名、父、母、本年配合種牡馬、最終種付け日、販売(希望)価格」。これに「本馬の競走成績と年令、産駒の競走成績、兄弟や近親の競走成績、母系と5代までのクロス」などが付記されている。

 やや乱暴に一言で表現すれば、まさに「玉石混交」ということになるだろう。まず、価格の面でも「応相談」から、600万円まで多彩である。ただし、総じて安い傾向が強い。価格帯を100万円以上と以下に分類すると、ちょうど半分ずつになっている。さすがに「本年未種付け」や「不受胎」の繁殖牝馬は価格の面でも強気になれないと見えて、あまり高い値段はついていない。

 とはいえ、中には「1999年生まれ、黒鹿毛、1勝、父キングマンボ、未供用、価格600万円」などという例もあるので油断できないのだが…。

 69頭中、受胎している繁殖牝馬は52頭。種牡馬をざっと列記してみると、パークリージェント、レオンプライド、オペラハウス、エアジハード、サンシャック、サッカーボーイ、チーフベアハート、メイショウオウドウ、ラストタイクーン、カリスタグローリ、ヤマニンゼファー、ディアブロ、バイオマスター、デザートストーリー、カリブカフェ、フサイチソニック、テンビー、スキャン、マイネルラヴ、キャプテンスティーヴ、ジャングルポケット、オース、ブラックタキシード、フィールドアスカ、ダンディコマンド、タヤスツヨシ、オースミジェット、ナリタトップロード、ヘクタープロテクター、マヤノトップガン、ストローズクリーク、ニューイングランド、キンググローリアス、ピルサドスキー、パラダイスクリーク、メジロマックイーンなどなど。

 最高価格の600万円を提示している馬はもう一頭いて、ジャングルポケットを受胎しているDという繁殖牝馬。スペシャルウィークの叔母という血統の良さもあってこの価格になったものと思われる。

 今更言うまでもないことだが、良質の繁殖牝馬としての条件は、まず血統が挙げられるだろう。それに本馬自身の競走成績があれば言うことなしである。更に産駒成績や、腹袋の大きな繁殖体型であること、性格が温順で扱い易いこと、などの点も無視できない。しかし、そもそもがそんな繁殖牝馬を他人に売るはずがない。やはり、その牧場にとって、もう「不要」となった馬から処分するのが普通なのだ。

 そういうことをあらかじめ考慮した上で選定する必要がある。とんでもない「掘り出しもの」が当たるか、「こんな馬だと思わなかった」と落胆するか、まさしく「神のみぞ知る」のだが、総じて繁殖牝馬もどちらかというと「買手市場」になっているのは間違いない。

 先週も書いたが、需要に対する漠然とした不安感を持つ生産者が少なくないので、「中途半端な繁殖牝馬を導入しても果たして上手く行くかどうか」と慎重な姿勢を崩さないのだ。まして、これから年末までの期間、生産者は金策に追われることになる。情けない話だが、新たな繁殖牝馬を購入するだけの資金が調達できるかどうかも怪しいのだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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