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本格化の手ごたえ/エプソムC

  • 2014年06月16日(月) 18時00分


◆馬場状態を問わない大きな強み

 4歳馬から8歳馬まで、5世代の多様なタイプがそろったシーズン末の1800mのGIII戦。

 この時期の重賞だから、ここを契機に夏を越して秋になればさらに…。そういう成長を示したい若いグループが人気の中心になり、まだまだ重賞路線の主役や準主役にとどまらなければならないベテラングループが伏兵評価を受ける形になった。

 勝ったのは5歳ディサイファ(父ディープインパクト)。オープンに昇級後、4,3,2,2着とあと一歩が足りないレースを続けてきたが、ようやく人気に応え、これから秋に向けて本格化の手ごたえをつかむ成長株となった。ちょっと勝ちみに遅いのは、先週7日の鳴尾記念でとうとう6回目の重賞2着(でも重賞未勝利)を記録した半兄7歳アドマイヤタイシ(父シングスピール)と同じだが、ここをきっちり勝ったことにより、陣営は、「夏は札幌記念の予定。やがて秋には…」。ビッグレースを展望することになった。

 ディープインパクト産駒にしては、稍重-不良馬場に【2-2-1-0】の良績を残すように、時計を要するコンディションはまったく平気。そこで他馬が嫌った内寄りに進路をとれた利があったろう。シーズン末で少々タフな状態に変化していた芝が味方したのである。

 半兄アドマイヤタイシの詰めの甘さ、そしてディサイファのディープインパクト産駒にしてはスパッと切れない特徴は、芝もダートもこなし「これまでで最高の馬(モハメド殿下陣営)」といわしめた母の父ドバイミレニアム(その父シーキングザゴールド)の影響があるかもしれない。

 これは、必ずしも日本の高速馬場向きではない死角を持つが、同時に、馬場状態などまったく問わない大きな強みでもある。ディサイファは、昨年の函館で2戦2勝。洋芝の北海道シリーズは間違いなく合っている。予定する札幌記念には、ハープスターも出走予定がある。

 ディサイファの祖母トリブレイション(父ダンチヒ)は、グラスワンダーの母アメリフローラの1つ下の全妹。グラスワンダーが有馬記念を2連勝し、宝塚記念も制したのは、芝がタフな状態に変化した時期にぴったり合っていたという見方もある。

 人気の中心になったマジェスティハーツは、この春、2着、2着の4歳馬だから、そうでなくとも人気だったろうが、「ハーツクライ産駒に横山典弘騎手」。だから単勝オッズ240円。これはさすがに「ちょっと人気になりすぎ」を、だれもが認める立場に立たされてしまった。大阪-ハンブルクCも、新潟大賞典も55キロのハンデで、タニノエポレット、ユールシンギングに競り負けている。

 悪いことに今回は少し出負け。気合をつければもう少し行けただろうが、1800mで流れに乗れるスピード系ではない。変に動かずリズムを整え直線の追い込みに賭けたが、この日のペースと芝では上がり33秒6で差を詰めるのがいっぱいだった。母の父ボストンハーバー(その父カポウテイ)、祖母の父ストームキャット。ハーツクライ産駒には5歳カポーティスター(母の父カポウティ)がいる。合わない組み合わせではないだろうが、流れの緩む2000-2400m級なら折り合って切れ味発揮もあるが、自在のスピードと切れを求められ、さらに坂のあるコースの1800mでは難しいタイプのように思えた。夏の平坦コースの2000mで巻き返したい。

 同じく4歳のタマモベストプレイ(父フジキセキ)は、距離が1800mになって3番人気の支持を受けたが、4着にとどまってしまった。長距離戦の緩い流れに連続出走してきたから、内田博幸騎手はスタートから気合を入れて好位で流れに乗る作戦。前半1000m通過「60秒2」の平均ペースにうまく乗ったが、ペースアップした「11秒8-11秒2-11秒3-11秒7」の後半、とくにペースの上がった11秒2-11秒3の地点で余裕がなかった。結局、勝ったディサイファと0秒3差。ただ、同じ善戦止まりでも、勝機のみえない長丁場での善戦とは違っていたから、明らかにこういう距離の方が合っている。次走も同じ距離に出走なら、進展は大きいだろう。

 ベテラン勢のしぶとさをフルに発揮した6歳マイネルラクリマ(父チーフベアハート)は、平均ペースと、レース上がりが34秒2にとどまった馬場がぴったりだった。ここまで1600-2000mを中心にさまざまなコースで好走してきたが、東京の芝で連対したのは初めて。1800mの最高タイムが1分46秒台。自身の上がり最高3ハロンが34秒1。今回も34秒1。まだまだ条件さえそろえばGIII重賞なら好勝負できる。この安定した粘り強い力量は侮りがたい。

 3着に突っ込んできた7歳ダークシャドウ(父ダンスインザダーク)は、最近は休み休みだったが、約2年ぶりに馬券圏内に浮上した。59キロを考えるとこれは見事である。7歳の夏とはいえ、戦績はまだ22戦【5-5-1-11】。ただ、ここまでトップクラスと厳しいレースを重ねた消耗もあるだろうから、これで復活とはいえないものの、入念に乗って適鞍の1800-2200mにマトを絞って出走する。次走も要注意か。2年前の札幌記念2着馬である。

 復活の期待された同じ7歳のペルーサ(父ゼンノロブロイ)は、ポン駆けが利いたこれまでのレース結果を振り返ると、後方のままの15着には「……」。ちょっと残念だった。馬体重は自己最高に近い528キロだったが、妙に寸詰まりの、どこといって目立たず、あまり楽しそうではないペルーサだったのが気になる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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