大差をつけての逃げ切りというのは、うまく読みが的中したファンと、圧倒的な勝利を収めた陣営以外にとっては、往々にして物足りなさが残ったりするものだが、このタップダンスシチーの逃げ切りは文句なしだ。
2400m2分28秒7。前半の6ハロンを1分14秒1で行き、後半のそれが1分14秒6。ミホノブルボン型の圧倒的な中身であり、後年、必ず「大逃げ」というような形容をすることもありそうだが、G1ジャパンCの1マイル半、これがしかるべきペースであり、少しも大逃げではない。佐藤哲=タップダンスシチーの全能力発揮だった。
恵まれてのマイペースや、大逃げではないことは、ゴール前の1〜2ハロンではっきりしている。もう一度伸びて一度は4〜5馬身差に詰まったものが9馬身差。今年の馬場はとにかく悪く、当然、負けた陣営はその敗因を「重馬場」に求め、まあそれはその通りなのだが、求められたのは秘める「底力」。ペースを取った馬に直線逆に引きちぎられては、負けを「底力不足」と認識するしかないだろう。
3歳ザッツザプレンティとネオユニヴァースは、現時点ではこの程度。スパートのタイミングもつかめなかったが、まだ世界のG1をねじ伏せる底力・総合力はなかった。
人気のシンボリクリスエスは、道中の行きっぷりが「悪かった」というが、タップダンスシチーとは有馬記念でもまったく互角。宝塚記念でも並んで入線のライバルであり、これまで示されていた能力は互角。ペリエ騎手がマークすべき(彼は有力馬をピタッとマークするタイプ)相手を、最初から間違えていたレースの視点のズレは否定できない。今年の最大目標であったジャパンCの完敗は、陣営にとっても大きなショックであるが、冷たくいうと、これが能力ともいえる。全レースを振り返り、その対戦相手を見直すと納得する。
注目の外国馬は、これも実は本当のレベル通りだ。近年、日本の芝向きの馬を招待する傾向が強いから、今回の重は合わなかった部分はあるが、負け方も、レース運びも、その他多勢の同内容だった。ブリーダーズC組、コックスプレート組へのボーナス制は大正解だったが、残念ながら今年、そこを勝った馬が弱い伏兵馬だった。