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生産牧場賞、さらにダウン

  • 2003年12月02日(火) 19時57分
 今年も残すところあと一ヶ月を切り、何かと慌ただしい時期になった。

 そんな折り、JRAから来年度の事業計画が発表され、減少し続ける馬券売り上げを背景にかなり厳しい「緊縮予算」が組まれることとなった。私たち生産者にとっても、「生産牧場賞」(従来は生産者賞という名称だった)が、また減額されて、より厳しさが増している。

 前年度と比較すると4%のマイナスで、総額52億9600万円。中でも大きいのは「市場取引馬生産牧場賞」が廃止されたことだろう。今年「父内国産馬生産牧場賞」が廃止されたことに続き、確実に「減らせるところから減らして行く」姿勢が一段と顕著になった印象が強い。

 総じて言えば「下に厚く、上に薄い」配分と表現できるかもしれない。今年度と来年度の生産牧場賞を比較すると、例えば新馬・未勝利戦での金額は、1着27万円(今年度24万円)、1勝以上の一般競走で1着43万円(今年度39万円)、特別競走1着64万円(今年度63万円)と、下級条件の非混合競走(つまり外国産馬が出走しないという意味である)に限ってはむしろ増額になっている。その分、「混合」と「国際」条件のものに関しては、特別と重賞ともに減額された。

 中でもG1国際競走としてランクされているジャパンC、有馬記念、宝塚記念は、1着の生産牧場賞が今年度700万円だったのが、一気に来年度は200万円も下降して500万円となる。ダウンの幅はレースの格が高ければ高いほど厳しくなっているのが大きな特長だ。

 これはつまり、一般の(例えば私たちのような)生産者にほとんど縁の薄いG1などを犠牲にして、下級条件の生産牧場賞を充実させることで、より多くの中小規模の生産者に報奨金が行き渡るようにしたということだろう。現に、普通の馬の場合には新馬・未勝利戦からスタートして、その次の500万条件あたりまでが手の届く範囲であり、その上の1000万条件以降は、限られた馬しか勝ち進めない。まして、オープンや準オープンともなると、ほとんど「雲の上」のような位置に霞んでいるのだから……。

 さて、それにしても、以前から疑問に思うことがある。この生産牧場賞は、あくまで「国内で現に施設を有し、生産に従事している者に限る」ことが交付の条件として明記されている。つまりは外国産馬には適用されない報奨金だということだ。

 ところが、年間を通じて少なくない数のレースを外国産馬が制し、その結果、本来は予算に組まれていたはずの生産牧場賞が実際には交付されないケースがかなり出ているだろうと思われる。

 生産者賞関連の総額52億9600万円は、あくまで「すべてのレースに内国産馬が優勝した場合」を想定した金額であり、実際の交付金額との間に相当な誤差(などという程度のものではないと思われるが)が生じているはずだ、ということ。この予算額と決算額の差額は、いったいどのような名目でどこに消えてしまうのだろうか。

 ともかくも、この結果、来年以降は、市場での取引に影響の出ることが懸念される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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