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日本軽種馬協会直営種牡馬、配合決定

  • 2003年12月23日(火) 11時23分
 このほど、平成16年度の日本軽種馬協会直営種牡馬(胆振・静内の二ヶ所にある種馬場に合わせて13頭)の配合決定通知が届いた。

 長い間生産地を支えてきたこの協会直営種牡馬の制度は、掻い摘んで言うと、JRAから無償提供を受けた一流種牡馬を格安の料金で生産者に供与するというもの。現在いる種牡馬の中ではフォーティナイナーがその筆頭格で、テイエムオペラオーの父オペラハウスも有名である。

 13頭の合計配合頭数は1200頭。民間の種牡馬とは異なり、配合頭数は多い馬で上限100頭に抑えられている。(フォーティナイナーなどは年齢的な理由もあり75頭)

 頭数が制限されているため、あらかじめ生産者は「配合申込書」を提出しなければならない。その際に、まず日本軽種馬協会の会員であり入会後一年以上経過していること、会費や診療費などの未納がないこと、配合を受ける繁殖牝馬が満19歳以下であることなどの諸条件を満たしている必要がある。

 そして、本馬もしくは産駒の競走成績も重要な選考の資料になる。駄馬では配合権利を獲得できないのである。

 倍率は種牡馬によってまちまちだが、実績のある種牡馬は別格として人気を集めやすいのは「初年度供用種牡馬」ということになるだろう。今年は、アラムシャーとコロナドズクエストが新種牡馬として新たにラインナップに加わった。

 だが、この日本軽種馬協会の種牡馬は、種付け料を前納しなければならない。不受胎の場合には全額返還されるとはいえ、前納制度に苦しむ生産者は決して少なくない。主要種牡馬の種付け料は、フォーティナイナーが378万円、カリズマティック346万5千円、ボストンハーバー294万円、コロナドズクエスト294万円(いずれも税込み)など。しかも、サラブレッドの価格が低落傾向著しい昨今では、以前ほどの「割安感」が乏しくなってきた。いかにフォーティナイナーといえども、牝馬では売却するのに苦労させられる時代なのだ。まして、それ以外の種牡馬では、生産原価を大きく割り込む産駒が続出しており、かつてのように「蝦で鯛を釣る」ようなことは夢物語になりつつある。

 そうした傾向を裏付けるように、配合権利を獲得しても、生産者が自ら「配合変更」してしまうケースが増えているという。一つは種付け料の調達に苦慮し、泣く泣く配合を断念せざるを得ない生産者が少なくないということに原因がある。

 かくして、「全体の三割程度は権利を放棄してしまっているのではないか」とも言われている。もしこれが事実ならば、改めて配合までのプロセスを見直さざるを得ない時期が来ているような気がする。

 「日本軽種馬協会の種牡馬事業は民業圧迫だ」との批判も以前はずいぶん声高に叫ばれていた。また、テスコボーイやトウショウボーイなどは、日高軽種馬農協所有の主戦種牡馬として一世を風靡し、配合権利を獲得するために生産者はシャレにならない争いを水面下で演じた。割安な種付け料に加えて、配合頭数の著しい制限が、種付け権利を文字通りのプラチナにした時代が確かにあったのだが、しかし、それも一部の民間種馬場によっていとも簡単に「大量配合時代」へと移行し、今や一気に人気種牡馬は年間200頭もの配合をこなす御時世である。この傾向は功罪相半ばするとはいえまだまだ続きそうな気配だ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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