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浦河神社新年恒例騎馬参拝

  • 2004年01月06日(火) 10時55分
 明治以来の伝統を誇る浦河神社騎馬参拝が1月2日に行われた。このところ総じて暖冬傾向にある北海道は、当日も微風の晴天に恵まれ、多くの参拝客が見守る中無事全馬が101段の石段を元気に駆け上がった。

 参加したのは、町の乗馬愛好家や乗馬少年団など総勢25騎。約10キロほど離れたBTC(軽種馬育成調教センター)から一般道を走ってくる12頭の乗用馬と、神社近くまで馬運車で運ばれてくるポニーやドサンコ13頭が、それぞれ別のグループを作り駆け上がりに挑戦する。

 私事ながら今年は小学校5年生の娘も参加することになり、いつもの年とは違った緊張感を味わった。年末に、娘の所属する浦河ポニー乗馬少年団は、都合二回のリハーサルを行い、石段の上り下りの感覚を覚えさせ本番に備えた。馬にとっても人間にとっても、恐怖心は「上がり」よりむしろ「下り」である。馬上で石段の上から下を見下ろすと「まるでスキーのジャンプ台に立ったよう」な光景に映るらしい。従って安全を期して下りは人間が手綱を持ち馬を先導する。そうしなければ降りられない馬がいるのである。

 さて本番の朝。まさしく絶好の騎馬参拝日和となった浦河神社には午前10時前後になると多くの見物客が集まり、馬の到着を待った。

 やがて国道を12騎の乗用馬が進んできた。神社に到着すると神主の祝詞とお祓いの後、お神酒がふるまわれる。それらの儀式が終って駆け上がりがスタートする。最初はこれらの乗用馬たち。12頭が一気に上の社殿までたどり着き、馬上から賽銭を投げお参りを済ませる。そして一頭ずつゆっくりと石段を降りて行く。石段を下まで降り切った人馬に拍手が送られる。

 境内が狭いので、この12頭はまたすぐ来た道を戻って行き、入れ違いに今度は子供たちの乗るポニーが13頭一列で入ってくる。全員小学生が騎乗し、最年少は4年生の女の子だ。我が娘も12頭中3番目の順にどうにか無事上がり終えた。下りはさすがに単独では無理で私が手綱を持った。親の方が緊張することがよく分かった。

 幸先よいスタートと言えるかも知れない。日高は翌日(3日)朝から雪が降り、一気に一面の銀世界となった。騎馬参拝の終了を待っていたかのような天候の変化に関係者は一様にホッと安堵したことと思う。雪が積もると、騎馬参拝は格段に裏方の仕事が増えるのだ。石段の除雪を始め、乗用馬のために道中は融雪剤を散布したりと多忙を極める。好天は何よりありがたいのである。

 ところで今年もまた、石段を上がったところの社殿の前では、一般客と報道関係者との間で場所取りを巡るトラブルがあった。毎年のことだが、限られたスペースに多くの人々が集結するため、「見えない」「邪魔だ」といった声が飛び交うのである。

 今年は間際に上がって来たテレビ局のカメラマンたちがやり玉に上がった。「今ごろ上がって来てなぜ私たちの前に立ちふさがるのか?」という不満が一般客から噴出したのである。ほとんどの民放が「お正月ネタ」として騎馬参拝を取材にやってくる。テレビカメラは大きいので一般客の視界が遮られるのだ。

 今後は報道陣と一般客をどのように「区別」して場所取りをさせるかが課題となるだろう。罵声を浴びたテレビカメラマンたちは無視を決め込んだり、「さっと撮ってすぐ降りるから」といなしたり、「元々ここに場所を取っていた」と主張したり各人各様の対応だったが、誰一人として「間際に上がってきて一般客の前に立ちふさがることへの弁明」はしないで終った。いや、できなかったというべきか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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