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2003年度種牡馬成績

  • 2004年01月14日(水) 11時55分
 年が改まり、昨年度の各種成績がまとまって新聞雑誌などで発表されている。騎手成績、調教師成績などから種牡馬成績まで、見ているととても興味深い。

 その種牡馬成績では、今更私が敢えて話題にする必要もないほど、昨年度のサンデーサイレンスの成績は際立った数字だった。出走頭数429、勝馬頭数195、出走回数2285、勝利回数303、入着賞金83億3023万円は、ちょっとこれから破られそうもない記録だろう。G1・10勝を挙げたことに加え、勝馬率0.455、アーニングインデックス2.77も、脱帽せざるを得ない前人未到の大記録である。

 JRAリーディングサイアー第二位のブライアンズタイムと比較しても、その“怪物ぶり”がよくわかる。ブライアンズタイムの成績とてすばらしいものだが、出走頭数がサンデーに対して53%、勝馬頭数が44%、勝利回数で39%、入着賞金に至っては27%まで数字が落ちる。

 さらに第三位のダンスインザダークも、それぞれサンデーとの比較で数字を挙げると、出走頭数50%、勝馬頭数30%、勝利回数27.4%、入着賞金25.9%と、まるで比較にならない。あたかも他の種牡馬はサンデーサイレンスの偉大さを単に引き立たせるためだけに存在しているかのようだ。まさしく「圧倒的な格差」と表現するよりない。

 かねてより感じていることだが、種牡馬成績は入着賞金の合計額によってのみ順位がつけられてしまうことにやや抵抗感がある。例えば野球では常に打率が野手の成績の判断材料として重視される。種牡馬の場合はさしずめアーニングインデックスがこれに相当する数字ではないだろうか。つまり平均値以上の数字を残しているのかどうかを判断する材料として、「出走馬一頭あたりの活躍度」をもっとも端的に表すアーニングインデックスをもっと重視しても良いのではないか、と思うのだ。

 この数字に注目してみると、ランキングの高い種牡馬でも、出走頭数の多さによって入着賞金こそ稼いでいるものの、不成績の産駒が多いためにアーニングインデックスが1.00を下回るケースが多々見られる。

 また出走頭数が少ないために入着賞金こそ低いものの、実は水準以上のアーニングインデックスを残している“渋い”種牡馬も散見できる。このように、中央と地方の二本立てで競馬が開催され、賞金体系が大人と幼児ほども格差のある日本では、中央競馬での出走頭数が多ければ多いほど「有利」となり、単純な賞金額だけの順列では、かならずしもその種牡馬の本当の産駒成績を判断できないのではないか。

 その意味で、昨年何とも皮肉だったのがザグレブという種牡馬。コスモサンビーム、コスモバルクという二頭の大物を輩出し、二歳馬ランキングでは堂々8位に入った。だが例えば(ここでも指定席!)サンデーは出走頭数でザグレブの10倍以上になり、入着賞金ではまったく勝負にならなかった。とはいえ、アーニングインデックスでは、8頭が1億8479万円を稼ぎ出し、何と7.65。特筆すべき数字を残す結果となった。

 ちなみにザグレブは、成績不振により、すでにアイルランドへと「輸出」されている。今年1歳馬はわずかに1頭のみ。2歳馬も3頭しか生産されていない。今年、この2頭のザグレブ産駒がどんな活躍を見せるか、あらゆる意味で「注目」して行きたいと思う。トワイニングのように、デビューした2歳馬の成績が良くて「再輸入」された例もあるくらいだから。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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