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オータムセール終了

  • 2014年10月15日(水) 18時00分
オータムセール展示風景

オータムセールでの落札風景



全体を通じての売却率はサラブレッド需要が庭先から市場へと移行してきている流れを裏付ける数字となった

 去る10月6日〜8日の日程で開催されたオータムセールについて続編を書かせて頂く。前回2日目が終了した時点での送稿だったため、中途半端な内容となってしまった。全日程が終了してから改めて振り返ると、初日、2日目と比較して3日目はやや失速気味となり、平均価格が227万2816円(税込)と、3日間を通じての平均価格よりも約55万円も下がる結果となった。

 高額馬が出なかった(最高価格馬は874万8千円)ことにも原因があるが、それよりも全体的に低価格馬の割合が多かったことがより大きな要因だろう。3日目は、254頭(牡108頭、牝146頭)が上場され、148頭(牡70頭、牝78頭)が落札された。売却率58.27%はほぼ前年並みだが、初日と2日目の売却率が高かったことから、オータムセール全体では、計703頭の上場(牡271頭、牝432頭)で436頭(牡187頭、牝249頭)の落札となり、全体の売却率は62.02%と前年比で4.86%の伸びを記録した。これで、春から始まったトレーニングセール、セレクションセール、サマーセールに続いて、このオータムでも売却率6割超えを達成したことになる。

 オータムセールの売り上げは最終的に11億3928万円(税抜き)となり、10億6500万円だった昨年と比べると7428万円の増加だが、上場頭数が33頭増え、さらに落札頭数も53頭、それぞれ増加していることから、平均価格は実質的に16万7678万円下落した。

 今年度の日高軽種馬農協主催による市場はこれで全日程が終了し、トータルでは2267頭が上場、1422頭が落札されたことになる。全体を通じての売却率は62.73%。前年比で6.84%もの大幅な増加で、サラブレッド需要が庭先から市場へと移行してきている流れを裏付ける数字となった。

「シャトルタテヤマの2013」の立ち姿

「シャトルタテヤマの2013」の立ち姿



 また、売り上げは前年の63億3445万円(税込)から70億4914万9200円(税込)に増え、久々に70億円を突破したものの、売却頭数が前年の1303頭から1422頭に増加したことによる結果で、税抜きの平均価格では、前年が462万9939円、今年度が459万と微減しており、あまり手離しでは喜べない。

 オータムセールを振り返り、日高軽種馬農協の木村貢組合長は「初日こそ台風の影響もあって懸念されましたが、3日間を通じて6割超えを達成できたことを嬉しく思います。

 これも多くの購買者の方々のおかげと感謝致します。好調の要因としては経済環境が良くなっていることで馬主の購買意欲に繋がっていることや、中央、地方ともに馬券売り上げが伸びてきていることで馬主さんたちも安心して競馬を続けられる安心感が出てきていることも挙げられると思います。特に地方の馬主さんの購買が今回は盛んだったように感じます」とコメント。さらに続けて「まずはたくさんご購買頂いたことを喜びたいと思います。市場を歩いてみて生産者の皆さんの中に安ど感のようなものが漂っていたように感じています。」と結んだ。

木村貢組合長

「(好成績は)多くの購買者の方々のおかげと感謝致します」と語る木村貢組合長



 なおオータムセールは、606人もの購買登録があり、これは前年よりも42人の増加だという。確かに、市場を見ているとしばしば聞いたことのない名前の方による落札が目立っていた。おそらくキャリアの浅い馬主層にも、1歳馬を市場で購入しようという動きがより顕著になってきていることを実感させられた。

 オータムセールを総括して木村組合長は「80点を付けられます」と採点したが、今後の課題としては、いかに平均価格を上げて行くかであろう。多くの購買者の眼前で上場馬が評価されるのだから、これが文字通りの市場原理とも言えるが、生産者の立場からすれば、生産コストに見合っていない落札価格の馬も数多く、本来ならばもう少し高く売れなければ台所事情は厳しい。100万円、150万円ではどう計算しても赤字であり、他の生産馬の売り上げでこの赤字分を補てんできなければ、牧場の経営収支はかなり厳しくなる。一度下がった平均価格を再び上昇させるには、生産者側の努力というよりも、むしろ競馬主催者側の賞金、出走手当などの増額に俟つ部分が大きい。幸い、このところ各地方競馬においては売り上げが少しずつ回復してきているとも伝えられ、来年以降、「馬主経済」がより好転してくれば、市場取引もさらに活発なものになるかも知れない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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