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これまで以上の勝負強さを感じさせたエアソミュール/毎日王冠

  • 2014年10月15日(水) 18時00分


本番ではエアソミュールにだれが乗ることになるのかがポイント

 このあと11月2日に行われる天皇賞(秋)には、チャンピオン牝馬の5歳ジェンティルドンナ。天皇賞(春)を2連覇した5歳フェノーメノ。菊花賞ではなく2000mのこちらに挑戦することになった3歳イスラボニータ。昨年の菊花賞馬、4歳エピファネイアなどのGIホースが出走を予定している。秋のローテーションとの兼ね合いもあり、イスラボニータ以外のトップホースにとっては、天皇賞(秋)は休み明け初戦になる。

 毎日王冠、京都大賞典を秋の始動戦に選んだグループは、単に体調を整えるステップレースではなく、有力視されているトップグループに追いつくために、秋に1戦したローテーションのプラスと、完成された秋シーズンの古馬のパワーアップが期待された。

 毎日王冠を制した5歳エアソミュール(父ジャングルポケット)は、角居厩舎の所属馬。これで僚馬のエピファネイア、デニムアンドルビーとともに3頭そろって天皇賞(秋)に挑戦することになる。鳴尾記念につづいて2つ目の重賞を勝った同馬は、これでオープンに上がってもう6勝目を記録したことになる。古馬GII以上の重賞では、これまで【0-0-0-4】。ことごとく完敗していたから、今回も8番人気止まり。ちょっと地味なGIII級の評価だった。

 しかし、懸念の折り合いの難しさを出すことなく中団のインで巧みに流れに乗り、4着まで「クビ、クビ、ハナ…」の大接戦を鮮やかに抜け出したレース運びには、これまで以上の勝負強さを感じさせ、ワンランクアップは間違いない。ねじ伏せたというほどの迫力はなかったが、上がり33秒台前半で勝ったのは今回が初めてである。天皇賞2000mが大接戦のもつれこんだ際の侮りがたい伏兵に浮上だろう。母の全兄は2冠馬エアシャカール。その上には、エアメサイア、エアシェイディなどの母エアデジャヴー(父ノーザンテースト)のいるファミリー。カギは、ここまで武豊騎手、戸崎騎手などが主戦ジョッキーだったが、本番では他の有力馬と重なる危険があり、だれが乗ることになるのかがポイントだろう。

「前半800m47秒1-(12秒0)-後半800m46秒1」=1分45秒2。絶妙のペースに持ち込み、寸前まで勝ったかと思わせたサンレイレーザー(父ラスカルスズカ)は、翌日は半兄サンレイデューク(父デュランダル)が「東京ハイジャンプ」を快走するなど、波に乗ったファミリーと、厩舎の勢いを感じさせた。脚を余した感もある昨秋のマイルチャンピオンシップで0秒6差6着があり、この相手なら好走して驚けないが、ここは逃げ馬不在を読んだ田辺裕信騎手のファインプレー(七夕賞のメイショウナルトと同じ)だった。2000m級になるともう一歩か。

 3着にとどまったスピルバーグ(父ディープインパクト)、4着に押し上げた上がり馬ディサイファ(父ディープインパクト)は、改めて中距離路線で十分に通用することを示したが、賞金順位からみて、天皇賞(秋)は難しいかもしれない。ここは最低でも連対したかった。

 1番人気のワールドエース(父ディープインパクト)は、故障したのかと心配させたが、「ずっとハミを取ってくれないままだった(小牧太騎手)」という13着。休養明けを考慮しても、とても立ち直った日本ダービー1番人気馬とは思えない大凡走であり、これではちょっと…か。

 これでは…となったのは、2番人気で5着に終わったグランデッツァ(父アグネスタキオン)も程度の差こそあれ、まったく同様か。日本レコード1分43秒9の独走を決めた5月の京都1800m時とほとんど同じ条件のここは、答えを出したかった。変にすっきり映りすぎた仕上がりだったとはいえ、抜け出して不思議ない展開からの失速は案外。早世したアグネスタキオンの「後継種牡馬に…」というほどの期待馬だが、底力不足を思わせた点がきびしい。



秋の有力馬となったラストインパクト、メイショウマンボはなんとなく体のバランスが崩れているように映った



 京都大賞典2400mは、不振脱出を図ったトゥザグローリー(父キングカメハメハ)が、ここまでコンビで4勝を挙げている福永祐一騎手が主導権をにぎって「1分12秒6-1分11秒6」=2分24秒2(上がり35秒1)という、非常にわかりやすいレース。わかりやすいというのは、強風の影響は考慮しなければならないが、京都2400mのモデルパターンのような流れで、ごく標準の勝ちタイムだから、これで望ましい結果が出ないようでは秋のビッグレースに向けて強気な展望は持てないという意味である。

 能力の目安は、こういうレースならおそらくあまり差がない善戦をしてくれるはずのタマモベストプレイ(父フジキセキ)だった。そのタマモベストプレイが2番手で流れに乗り、大方の予測通り2分24秒台でがんばっている。

 これを少し離れた位置から計ったように差し切ったラストインパクト(父ディープインパクト。祖母パシフィカス)は、これまでもう一歩の詰めの甘さを抱えていたが、出負けした新潟記念を後方から追い込む形で微差の3着。ようやく本格化を思わせたあと、この距離できちっと勝ち切った自信は大きい。祖母がパシフィカス(父ノーザンダンサー)なので、普通にいえばビワハヤヒデ、ナリタブライアン兄弟の妹にあたるのが母スペリオルパールだが、この一族の牝馬は数多く輸入されている。パシフィックプリンセスから広がるファミリーとするとき、祖母にパシフィックプリンセスを持つキズナ(父ディープインパクト)も近親馬である。4歳秋、適距離は2000-2400mと思えるから、秋のビッグレースの有力馬となった。

 差はなかったとはいえ、流れもライバルも分かっていた人気のトーセンラー(父ディープインパクト)は、これで通算【4-5-6-8】。凡走こそ少ないものの、勝ち星4勝に対し、2着-3着の合計が「11回」。歯がゆい馬の代表からやっぱり抜け出せない。早めに動くともっと危なくなるから、つらい馬である。

 メイショウマンボ(父スズカマンボ)は、前走から16キロ増の504キロ。ここまでビッグレースの好走はすべて馬体重488キロ以内なので、4歳秋の充実というより、ちょっと太め残りだったろう。もとより使って良化型。変わってくれるはずだが、宝塚記念が1秒5差。今回が1秒2差。ともに後半に失速の大負けが2回続いてしまったのが気になる。なんとなく体のバランスが崩れているように映った。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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