トーホウジャッカルとダブって見えるマーティンボロ/トレセン発秘話
◆まだまだ伸びシロがある魅力
競馬記者になったばかりのころに取材で聞いた新鮮な言葉はよく覚えているものだ。栗東に来てまだ間もない時に前週の競馬で直線で前が詰まって負けた馬のことを当時、安田伊厩舎で騎手をしていた安田康に聞いたところ「詰まって負けるなんてのは脚がないから。脚が残っていたら、狭いスペースでも割って伸びてくるものだ」と言われ、「へぇ〜、そんなものなのか」と妙に納得したことがある。
その後、いろんなレースを見てきて確かに、その通りと実感できた。たとえ前が詰まって追えない馬がいても、わずかなスペースができた時、それを割って出てこれないようでは、馬群がバラけてからも大した伸び脚を見せることは、まずない。
物議を醸した新潟記念のマーティンボロ。多数の馬の進路を妨害したローウィラーの騎乗は決して褒められたものではないが、何度も他馬に接触しながら、あの狭いスペースをひるまずブチ割ってきた馬の勝負根性と末脚は、相当なインパクトだった。最後の余力だけでは決してブチ破れない厚い壁…レースの印象は悪かったにしても、逆に馬の勝負根性とポテンシャルの高さを見せつける結果だったと言える。
「ひと夏越してまた馬がワンランク上がった感じを受けます」とは担当の田代助手。5歳秋といえば、ほぼ馬は完成してしまっている時期だが、マーティンボロは8月20日の遅生まれ。まだまだ伸びシロがあるというのも魅力だ。
かつては良馬場の平坦限定といったイメージだったが、昨秋から道悪、左回り、坂のあるコースと様々な条件を克服。レースを重ねるごとに、同じように道悪、坂、輸送、長距離といろんな条件を克服して見事、菊の大輪を咲かせた先週のトーホウジャッカルとダブって見える。今のマーティンボロなら、タフな東京も、58キロもアッサリこなしてしまうかも…。それなりの印は必要だろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)