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ノミネーション情報

  • 2004年01月27日(火) 11時27分
 年が明けると、各エージェント会社から種牡馬の「売り株情報」がFAXで送られるようになる。

 以前は封書だったのだが、最近は定期的にFAXが流れてくるようになった。種付けシーズンを迎えるのはだいぶ先の話だがそれでも早々と「満口」表示になっている種牡馬が登場し始めている。新種牡馬のシンボリクリスエスやタイキシャトル、ワイルドラッシュ、アグネスタキオン、ダンスインザダーク、マンハッタンカフェなど。新しい種牡馬と定番の社台系種牡馬の人気が高いようだ。

 ところで今年産駒がデビュー予定の種牡馬は、アグネスワールド、ウェイオブライト、グラスワンダー、スキャターザゴールド、フレンチデピュティ、キングヘイロー、マイネルラヴ、メイセイオペラ、メジロブライトなど。つまり今年でこれらの種牡馬は4シーズン目を迎えるわけで、初年度産駒の競走成績によって以後の種牡馬としての評価がある程度決定される意味からも、大切な節目の年となるのである。

 そうした点を踏まえながら、改めて昨年度のJRA2歳馬リーディングサイアーを見てみると、上位10傑にランクインした種牡馬のうち本邦初年度産駒を送り出した新種牡馬は3頭いるが、皮肉なことにすでに死去していたり、輸出されていたりという種牡馬の健闘が顕著である。第4位にはエンドスウィープ、第7位にトワイニング、第9位にエルコンドルパサーの名前が挙がっており、トワイニングこそ再輸入されたもののエンドスウィープとエルコンドルパサーは不幸にもこの世を去った。この成績を見る限りいかに大きな損失だったのかが分かる。

 以下はずっと下がって第20位にスペシャルウィークの名前がある。鳴り物入りで生産界に迎えられたサンデーサイレンスの後継種牡馬だが、現時点ではやや期待はずれの成績に終わっており、ノミネーション情報でも、「受胎確認後300万円」の条件でまだ余裕があるらしい。初年度には確か500万円は下らなかったはずだが、45頭が出走し勝ち馬4頭、アーニングインデックス0.56では、強気に出られないのかも知れない。

 とはいえ、これとてまだ未知の部分が大きい。スペシャルウィークの場合、初年度産駒(2001年生まれ)は、日本軽種馬協会発行の「全国馬名簿」で確認すると全部で106頭もいる。一方で昨年度に出走した産駒数は地方競馬も合わせて47頭。まだ半数がデビューを待っていると考えられるだろう。今年の巻き返し如何ではまた評価を上昇させられるかも知れない。期待が大きかった種牡馬なので、初年度にはとりわけ高水準の繁殖牝馬が重点的に配合されているのだろうから。

 さて、一般論としてだが、今年はかなり種付け頭数が減少するだろうという予測がある。昨年秋に書いた「未登録馬905頭」の大きな原因の一つには、種付け料の問題がある。相次ぐ地方競馬の廃止は、競走馬需要に大きな影を落としている。とりわけ牝馬が苦戦を強いられている。こうした背景から種付け料が依然として生産者にとって大きな負担になっているのは間違いなく、何らかの改善策が必要になるだろう。

 「価格は市場原理で決定される」のは初歩的な経済学だが、実質的にサラブレッドの価格が低落傾向にある今の現状に合わせた種付け料設定にならなければ、結局のところ生産界の衰退を加速させるだけである。

 「売れたものの種付け料も取れなかった」などということが続けば、牧場は確実に経営破綻を招く。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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