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浦河町軽種馬生産振興会総会

  • 2004年02月10日(火) 11時16分
 今年で第55回を数える浦河町軽種馬生産振興会が2月9日、浦河町総合文化会館にて開催された。

 この団体は、「軽種馬生産及び育成技術向上のための研究活動を行なうと共に、会員相互の親睦と教養を高め団結して軽種馬の改良増殖に寄与すること」を目的に設立された。戦後の混乱期から現在まで、生産者と共に歩んできた団体である。

 しかし、とりわけここ数年は不況がより深刻の度を増していることから、総じて予算も減少傾向にあり、加えて会員数も年々漸減しつつある。

 主な事業の一つとして、G1レース優勝馬が会員の牧場から生産された場合に祝賀会を開催することがある。浦河の場合、昨年2月には、その前年のショウナンカンプとダンツフレームの二頭がG1制覇を果たしたことから盛大に祝賀会を催したものだが、昨年はついにJRAのG1優勝がなく、したがって今年は重賞優勝馬(地方交流重賞を含む)の表彰式だけで終わった。

 席上、関連団体からかなりの数の来賓が出席し、祝辞をいただいたが、中央地方共に前年度を割り込んだ馬券売上げを背景に、今年はとりわけスピーチの内容がかつてないほど厳しいものだった。

 中でも注目されたのは、我がひだか東農協の谷口貢組合長の祝辞。

 「多くの生産牧場は、自己繁殖牝馬を所有して生産を続ける限り、決して利益を上げられないのが現状である」と、昨年末の農協への生産馬販売金入金状況を例に取りながら明言した。一部の人気種牡馬産駒は庭先でも活発な取引が行われているがそれ以外は総じて苦戦し、結局売れ残るという現状について淡々と語った。

 また前川敏秋・日高軽種馬農協組合長は、今後の需要減について「相次ぐ廃止により、地方競馬はやがて近い将来、南関東4場を含め全国で8場か9場にまで減少して行くのではないか。もしそうなれば、現在8000頭以上も生産しているサラブレッドはどう見積もっても2000頭程度が余剰となる」と語った。

 いずれにしても、今後の見通しとして生産者にとっては厳しい内容の話が多く、かといって明るい材料に乏しいことは誰もが実感しているところで、何ともやりきれない重苦しさが漂っていた。

 また前川組合長は「日高軽種馬農協の組合員でありながら、賦課金や診療代金を未払いのままにしている牧場がかなりある」と触れ、「今後は除名も含め、厳しい態度で臨みたい」とも語った。義務を果たさず権利だけ主張する日本人が最近多いそうだが、改めて生産者のモラルも問われる時期にきているのだろう。いつぞや聞いた噂では、日高のある町の牧場に診療代金を請求に赴いた軽種馬農協の職員に対し、傷害事件を起こした牧場主もいたそうである。唖然とするようなエピソードだ。

 ややもすれば、生産者イコール弱者という図式で語られることが少なくないのだが、内実はそれこそ各人各様の経営内容であり、意識のありようもまたピンキリである。完全に「独立独歩」で自立している牧場もあれば、負債が増え過ぎてまるで展望のない牧場もまた多い。

 すべての生産者が生き残れることは100%あり得ず、今後はやはり原点に立ち返り「自己責任」で経営できない牧場には廃業してもらうしか道は残っていないだろう。

 また折に触れ、この問題は書いて行きたいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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