◆藤沢則雄調教師「(落鉄は)前じゃなくて後ろ脚、しかも右回りで軸脚になる右トモだからね。あれでは力を出せないよ」
「落鉄」といえば、前脚の蹄鉄が外れることが定番なのだが、まれにトモ(後ろ)脚を落鉄する馬もいる。
思い出すのはヴァーミリアンがダート路線にかじを切りだしての3戦目、明け4歳初戦に臨んだ平安Sだ。逃げるタガノゲルニカを捕らえきれずアタマ差2着。検量室から出てきた鞍上の武豊はこう口にした。
「落鉄していたのが痛かった。前ではなくて、トモを落鉄していたから、余計に踏ん張りが利かなくて…」
基本的に馬は“後輪駆動”で、後ろ脚が推進力の源になる。前脚と後ろ脚、どちらを落鉄した方が競走能力に大きな影響を及ぼすかは考えるまでもないだろう。
で、ここからが本題。3日間競馬のトリとなる月曜(12日)中山メーン・GIIIフェアリーS(芝外1600メートル)に出走するオーミアリスは、前走の阪神JF(9着)のレース中、向正面で他馬に外からぶつけられラチに接触。このアクシデントで右トモを落鉄したという。「前じゃなくて後ろ脚、しかも右回りで軸脚になる右トモだからね。あれでは力を出せないよ」と藤沢則調教師。
正直な話、このオーミアリスが勝ったGIII小倉2歳Sはハマった感もあり、「GIに入っては厳しいだろう」が事前の坂路野郎の見立てだったが…。道中不利を受け、トモを落鉄しながら、しまいジワジワ伸びてきた内容には「評価を上方修正しなければ」という思いが強くなった。
クラシック出走はほぼ“当確”といえる賞金(1900万円)を持っており、普通なら阪神JF後は桜花賞トライアルまでひと息入れるもの。あえて放牧には出さず、続けてレースに参戦する理由は「オーナーもあの競馬では消化不良ということで、今回ここに使ってほしいというリクエストがあったんだ」(藤沢則調教師)。そう、消化不良のレースを受けてのうっぷん晴らしの場がこのフェアリーSなのだ。
今回、鞍上に早くから指名していた北村友が、昨年暮れ(12月28日=阪神3R)に開催4日間の騎乗停止処分を受けながら、今週が3日間競馬のため、フェアリーS当日には騎乗停止が明けているのも、なんだかオーミアリスに運が向いてきたような気がする。
(栗東の坂路野郎・高岡功)