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暴風雪波浪警報

  • 2004年02月24日(火) 18時05分
 この冬(12月1日から2月20日まで)北海道南岸を通過した低気圧は計10個にも達したそうだ。暖かな南風とともに湿った空気を運び込み、そのためにしばしば雨が降った。ところが、南岸を通過して道東へ抜けた低気圧はそこで猛烈に発達し、等圧線がまるで蜘蛛の巣のような形に出来上がる。大雪と暴風に襲われるのはそんな時である。

 2月23日にも、道東を中心に大変な悪天候となった。そのちょうど一週間前には、前回のこの欄でも書いたように帯広競馬場へ行ってきたのだが、往復(片道約140キロある)の際に、十勝と日高の自然条件の違いを目の当たりにした。浦河から236号線で野塚トンネル(北海道で最も長い)を越え、十勝に入ると沿線に見える景色は一変する。雪が日高とは比較にならないくらい多いのである。浦河がせいぜい積雪10センチ程度だったこの時でも、帯広へ向かう途中の大樹町や忠類村、中札内村などは、まるで東北の日本海側の豪雪地帯を連想させるような風景に見えた。路肩に積まれた雪山が人間の背丈をはるかにこえているし、住宅の屋根に積もった雪もかなりの厚さになっている。

 なぜ、日高と十勝では雪の降り方が違うのか、というと、日高山脈の東側と西側の違いなのだそうだ。つまり、低気圧が猛烈に発達し、強い東風に乗って雪雲が東方より北海道に侵入してくる。日高山脈に雪雲がぶつかると、東側の十勝は大雪が降り、日高には大して降雪がないということになるのである。

 この「恵まれた?」自然環境が、日高に軽種馬生産を根付かせた大きな要因だとも言われる。北海道の中では積雪が少なく、しかも温暖な気候(夏もまた冷涼な気候だ)により、私たちはどれほど助けられているか。だいいち除雪の苦労から解放されているだけでも、相当に恵まれているはずなのだ。(札幌などの都市部では雪の捨て場を巡って、隣近所が争いになるという)

 とはいえ、日高を訪れる客の多くは千歳空港に飛行機で降り立つ。この千歳がまた今年は悪天候により、しばしば閉鎖された。除雪が間に合わないのである。2月22日から23日にかけても、暴風雪のために欠航が相次ぎ、関西から社台スタリオンSの種牡馬展示会を見学するべく予定を組んでいた知人が関空で足止めを食らった。

 その数日前、東京から「馬産地見学ツアー」にて日高入りしていた別の知人は、22日の夜に何とか予定通り帰宅できたそうだが、すでに空港は「大変な混雑」だったという。その夜から千歳空港を出発する予定の便が欠航し始め、ターミナルビルの中で夜明かしをした人が200人もいたとテレビで報じていた。

 本来ならばここでは23日に開催された社台スタリオンSの種牡馬展示会のことを書かねばならないところなのだが、そんなわけで私自身も悪天候に気後れして、ついに行かずに終わった。翌日のスポーツ新聞などには猛吹雪の中で強行された展示会の模様を伝える写真が掲載されていたが、改めて3月1日と8日にも、関係者向けに再度種牡馬を展示する予定があるとか。

 関西から来る予定だった知人は23日に携帯で連絡を寄越し、「来月1日に行くことにした」と言っていた。猛吹雪の中をレンタカーで走る自信がない、というのは当然の話で、それは慣れているはずの私たちでも同じこと。北海道の冬は、いくら暖冬傾向にあるとはいえ、やはり侮れない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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