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ばんえい競馬開催終了

  • 2004年03月01日(月) 19時10分
 2月29日の帯広開催をもって平成15年度のばんえい競馬の全日程が終了した。

 昨年4月19日に旭川より開幕したばんえいは、26開催153日のロングラン。残念ながら売上は169億1026万円と、予算比94.2%に終わり、平成元年の北海道市営競馬組合結成以来、最低の数字を記録した。入場人員も57万4410人と、昨年より3万6212人減少した。

 今年度は4月17日より例年通り旭川開催からスタートするが、他の地方競馬と同様に、かなり厳しい環境になってきている。厳しいどころか、「逆風」としか表現しようのない事件も頻発しているのがばんえい競馬だ。

 北海道新聞が29日に報じたところによると、27日午後6時15分頃、帯広競馬場内のM調教師宅に年配の女性の声で複数回「お宅の馬に抹茶をまいた。ごめんなさい」という内容の電話がかかってきたそうである。通報を受けた組合は、M調教師の管理馬のうち、28日出走予定の馬2頭を競走除外とする処置を講じた。また29日(最終日)に出走予定だった別の2頭は、M調教師が自ら出走を取りやめる事態となった。

 「抹茶入り」とされる飼料は馬が全て食べてしまったことから、組合側は4頭の馬の尿を競走馬理化学研究所(栃木県宇都宮市)に送り、現在、検査結果を待っている段階だそうである。

 いったい「年配の女性」が何者なのか、どんな目的でこういう電話をかけてきたものか。「複数回かかってきた」そうだから、単なる悪戯とは思えない執拗さを感じる。

 売上減少の折、こんな形で開催の邪魔をされるのはやり切れぬはずだ。以前にも、ばんえいはコース上に蝋が撒かれたとかで(あれはどこの競馬場だったか?)砂を入れ替える騒ぎが起こったことがある。「いったいどうなっているのか」とファンが不信感を募らせるのは避けられない。

 残念だが、28日には、もう一つの「不祥事?」も発生した。この日の第2競走。オリヅル号が第2障害を下ったところで一気に外側の隣のコースに斜行してしまい、ホワイトホース号の進路を妨害した、というもの(ばんえいはセパレートコース)。それだけならば「よくある話」だが、明らかに進路妨害であるにもかかわらず、オリヅル号はそのまま3着に入線し、レースは確定した。

 普通ならば「審議」の対象となるケースだが、オリヅル号と騎乗していたS騎手に関しては「制裁なし」で終わるかに思えた矢先、翌日になって「オリヅル号は調教再審査、S騎手は平成16年度開幕より5日間の騎乗停止」という「処分」が下されたことが明らかになったそうだ。

 このレースを知人が見ていた。「完全に外側のコースに入ってしまっているんだから、進路妨害したのは間違いない。現に隣のコースの騎手は手綱を引っ張って馬を止めていたんだから」と、証言する。

 なぜ、審議にならなかったのか。この点を組合に問いただしてみたが、納得の行く説明は得られなかった。「騎乗停止5日間」というのは、かなりの重罰である。この裁定の直接のきっかけになったのは、紛れもなくオリヅル号騎乗時のコース逸脱が原因だという。であるのならば、せめて「審議」の対象にしなければファンが納得しまい。

 知人は「3着だったからみんな大人しくしていたものの、オリヅルが仮に2着ならば大変な騒ぎになっていた」と言う。発売票数が単複と、馬連・馬単とでは桁がまるで違う。当然、連に絡んでくれば的中馬券を持っている人も持っていない人も黙ってはいられなくなるだろう。

 「騎乗停止5日間」と「調教再審査」の裁定は、この時の人馬のミスを認めたからこそ下ろされたもの。ならばなぜ「審議のランプ」が点灯しなかったのかが理解できない。

 生き物である以上、馬もコースを逸れたり、それを御しきれない騎手がいることくらい私にも分かる。組合側は「故意による妨害か、過失によるものかで審議の対象になるかならないかが分かれる」と答えたが、見ただけで「故意か過失か」をどう判断できるのか?たとえ故意にしても、「わざとやりました」などと間抜けな弁明をする騎手がいるとは思えない。「しっかりやれよ、採決を」と知人の怒りは収まらない様子だ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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