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復びすべからざる為にせば、則ち事敗るることすくなし

  • 2015年02月12日(木) 12時00分


事を成すには思い切りも大切

 ここ一番の大事なときには、慎重さが必要だ。それはよく分かっている。しかし、事を成すには思い切りも大切。だから、「大胆は慎重の上に建つ」とも言われている。「韓非子」には、「彫刻をするときは、鼻は大きく目は小さく作り始めた方がいい。大きな鼻は小さくできるが、小さいと大きくはできない。また、小さい目は大きくできるが、小さいと大きくはできない」という話が書かれてある。目にした本に出ていたのだが、修正のできないところに気を配って行なえば、失敗することは少ないという教訓でもある。「復(ふたた)びすべからざる為にせば、則(すなわ)ち事敗るることすくなし」、つまり、「修正がきかないことを念入りに行なえば、失敗はしないもの」と。

 牝馬ながら牡馬相手のきさらぎ賞を勝利したルージュバック。新馬戦、特別とケタ外れの末脚で連勝し、東京の二千米では2歳レコードをマークした強さ。ソエが出て3ヵ月の調整期間を経た今回は、春の目標に立ち向う大切な一戦だった。大竹調教師は、長距離輸送と右回りを経験させる為の西下としていたようだが、きさらぎ賞を選択したのは、出走頭数が多くならないことと、京都の外回りの千八百米ならゆったりとしたレースの流れになるのでダメージが少ないということだった。とにかく、勝ってクラシック出走を可能にする賞金加算、これが達成できたのは大きい。しかも、3番手で折り合い最速の上がりをマークするという競馬センスの良さを発揮したのだから、収穫は大きかった。もともとあった気性の荒い面をカバーできたこれまでの3戦は、「修正がきかないことを念入りに行なえば、失敗はしない」を実戦したのだった。

 共同通信杯は、東京の千八百米。ダービーを見据える陣営のターゲットだ。かつてここを勝利したナリタブライアンは、三冠馬となり、その年の有馬記念で日本一に輝やいた。その絶対的な強さは、この共同通信杯から始まり、有馬記念で一気に完成した姿を見せてくれたのだが、ここ一番の大事なとき、それが共同通信杯であったと思っている。あの勇姿が懐しい。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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