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日高軽種馬農協総代会

  • 2004年03月23日(火) 19時05分
 去る3月19日、静内町公民館において「第33回日高軽種馬農協総代会」が開催された。

 日高管内の生産牧場のほとんどが加盟する組合員戸数1233(平成15年度末)の日高軽種馬農協は、生産に関するあらゆる(金融を除いた)事業を行う。

1.北海道市場事業 2.販売促進事業 3.種牡馬事業 4.診療事業5. 生産者組織の強化及び農政事業 6.経営改善事業 7.競馬への支援協力 8.各振興会及び青年部への協力 9.情報活動

と、おおまかに以上の9項目が主要事業として挙げられる。1.北海道市場は昨年、5月の2歳馬トレーニングセールを皮切りに7月セレクションセール、8月サマーセール、9月セプテンバーセール、10月オータムセールまで開催され、2747頭が出場し、823頭が売却された。売却率29.96%。総売上は45億556万円と前年を3億2000万円余下回った。

 2.販売促進事業は、「販売情報誌・クレレ」に1歳馬563頭を掲載し4000部を発行、全国の購買者へ向けて発送・配布し生産馬の販売流通促進を実施した。

 3.種牡馬事業は、組合所有種牡馬5頭体制(アドマイヤボス、グランドオペラ、ダイタクヤマト、マチカネキンノホシ、ポリッシュパトリオット)で種付け業務を実施し、預託馬7頭と合わせて計341頭の繁殖牝馬に配合した。

 4.診療事業は、浦河3名、静内4名、門別3名の獣医師を配置し、診療業務を実施。3箇所の診療所で計2億8933万円余の収益を計上した。

 主要な事業はまだ他にもあるのだが、すべてを紹介して行くとそれだけで分量がオーバーしてしまうのでこのくらいにしておく。つまり私たち生産者にとっては切っても切れない関わりを持つのがこの組合であることをまずご理解いただきたい。

 その上で、今回の総代会は、一つの重要な議案が上程された。それは「組合員の除名」に関するものだ。

 過去どのくらい前からなのかは判然としないが、一部組合員の賦課金(現在は、組合員割3000円、繁殖牝馬割サラ6000円、アラ1000円、生産馬割サラ8000円、アラ2000円)と診療代の未収金が各々6000万円台にも膨れ上がっており、ここ数年は毎年のように「未収金をどうするのか」が議題に上っていた。

 それで昨年から組合は50余軒の未収金が残る組合員に対し、戸別訪問や文書などで支払い請求を繰り返し実施してきた経緯がある。しかし、今回11軒の組合員がまったく誠意を見せない、との理由からついに除名されることが議決されたのだ。

 総代会に出席したのは11軒中ただ1軒。Tさん夫妻だけだった。弁明の機会を与えるために組合が11軒すべてに案内状を出したはずだが、Tさんを除く10軒は「除名もやむなし」とすでに覚悟を決めていたのだろう。しかし、Tさんだけは今回の処分に納得できないと弁明に赴いたわけである。

 昨年夏の台風により、Tさんの牧場は水没してしまったという。その後始末に追われるさなか、組合は職員を訪問させたり、文書で繰り返しこの未収金問題に取り組んできたのだ。台風被害に遭ったTさんは誠にお気の毒としか言いようがないが、「一度に支払ってくれ、とは言わない。支払い計画書を提出して少しずつでも支払うという姿勢を見せていただきたかった」と主張する組合側と、「台風被害のために仮設住宅での生活を強いられている私に除名とは何事か」と主張するTさんとの“論争”はどこまで行っても平行線のままに終わり、いとも簡単に「除名」が議決されてしまった。

 今回の除名対象者は、平成13年までの未収金に限定してのことだったという。つまり、昨年たまたま天災に遭ったために1年分だけが未収になってしまっているケースは除外したということだろう。Tさんの滞納がどれくらいの期間と金額に及ぶのかはついぞ明らかにされなかったが、個人的には「義務と責任を果たすことが組合員としての最低の務め」だろうとは感じる。とはいえ、ひとたび「除名」ともなれば、今後Tさんの未収金は回収がますます困難になってしまうのではないだろうか。「支払いが滞ったので除名した」という組合側と、「除名された以上、もう義務は果たさない」と(おそらく?)主張するであろうTさんとの争いは当分続くはずだ。これもまた厳しい生産地の実情の一端が窺えるエピソードである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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