スマートフォン版へ

岩手競馬、2006年度まで継続

  • 2004年03月30日(火) 11時54分
 去る2月6日に地元紙・岩手日報が「岩手競馬最終報告・廃止の方向へ」と題する記事を一面に掲載したことから、関係者を始め、全国の競馬ファンにもかなりの衝撃をもたらす形となった岩手競馬。このほど、増田知事は「2004年度前半に県競馬組合の生死を賭けた経営改善計画を策定させ、その枠組に沿って2006年度までの開催は行う」との方針を示し、一応の道筋は立てられた。

 地方競馬の雄として、県内全域に場外施設を展開し、96年春には盛岡に新競馬場をオープンさせた岩手県競馬組合も、ここ数年は売上減に悩まされ、累積赤字が徐々に増えてきていた。それを受けて「岩手競馬のあり方懇談会」(委員長・千葉伝氏、委員9名)が昨年来数度にわたり議論を重ねて最終報告書を提出したのが3月19日。それによれば「歳入不足がこれ以上増加するのならば期限を決めて廃止すべき」「岩手競馬開催の今日的意義はほとんど認められない」などという極めて手厳しい内容となっていた。一方で、「健全な娯楽の提供、雇用や地域経済への効果があること」は認めつつも、「現行制度の上では競馬開催が地方財政への寄与を目的としているため、その観点からは意義を見出せない」としていた。

 この最終報告書をもとに、増田知事は向こう三年間の開催の推移を見極めた上で再度結論を出したいとの方針を打ち出したわけだが、その背後には、競馬事業が関連業務を含め2800人もの雇用を生み出し、廃止するとなると地域経済への打撃が大きいこと、また競馬組合構成団体の岩手県議会、盛岡市、水沢市が存続を強く求めていることなどもある、と言われている。

 そして農水省が今国会に提出している競馬法改正の動きにも注視しつつ、抜本的な改革を推し進め、何とか2006年度までには赤字体質からの脱却を図りたいとの意向のようである。

 私たちの生産者団体(日本軽種馬協会など)もこの一連の報道に接し、去る3月1日に岩手県、盛岡市、水沢市を訪れ、存続要望書を手渡し「岩手は地方競馬のリーダー格。そのリーダーに万が一のことがあると日本の競馬そのものが崩壊しかねない」と訴えたと聞く。
 まったくその通りであり、大袈裟に言えば、生産地の浮沈の鍵を握るのは、今後三年間の岩手競馬の動向にあると言っても決して過言ではない。何とかこの危機を乗り切っていただきたいものと切に願うところだ。

 なお、2003年度末の段階で、岩手競馬の累積赤字は106億円という。この一年間で約40億円ほどの増加となり、前途は厳しい。新年度は4月3日より開催が始まるが、賞金や諸手当などで6億円、外部に委託している映像、警備などの業務委託費も6億円とそれぞれ前年度より減額したのに加え、競馬組合職員の期末手当や特別職職員給与を各々30%減額するなどして人件費も2475万円削減したという。

 等しく痛みを分かち合って難局に立ち向かう姿勢には拍手を送りたいところだが、昨年まではもっぱら削減・減額の対象が賞金や諸手当などに偏っていたのも事実で、むしろ遅きに失した感さえある。ついでに付け加えると、開催経費の削減イコール賞金・諸手当の減額という図式が一般的だが、この方法は長い目で見ると、決して競馬の発展に寄与しないどころか、競馬そのものを急速にレベルダウンしかねない危うさを持つ。賞金が下がると、馬主経済(あまり好きな言葉ではないが)を悪化させ、その結果上質馬が入厩しなくなり、出走馬のレベルが下がる。そうなるとレースもまたつまらなくなるし、馬券も売れなくなるという図式である。何より関係者のモチベーションの低下を招かなければ良いが・・・と憂慮されるところだ。

 ともあれ、岩手競馬の今後三年間の「改革」が、全国の競馬ファンからも注目されることとなるだろう。何とか存続に向けて、踏み止まって欲しいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング