スマートフォン版へ

社台系種牡馬が独占

  • 2004年04月06日(火) 15時09分
 いよいよ春のクラシックが開幕する。毎年のことだが、この「桜花賞」に始まる3歳馬のG1は、生産者にとっても大変興味深いものがある。

 「桜花賞」とはいいながら、しかし、桜の花はまだ咲いているのだろうか?例年よりもかなり早く開花してしまった今年の桜は、本番の桜花賞を待たずにはかなくも散ってしまうのではないか、といささか心配なのだが・・・。関西の友人などによれば「今年は子供の入学式さえ危ない。桜なしの入学式になるかもしれない」とのことだから、何とも困った話だ。地球温暖化による開花時期のずれが、競馬の日程にまで影響しているということか。

 さて、それはさておき。今年の桜花賞の出走メンバーは、より一層「社台系種牡馬」の寡占が進行し、出走資格の確定している17頭のうち、ロイヤルセランガーを除くと、後はいずれも社台系種牡馬の産駒と、外国産馬(持ち込みも1頭いるのだが)ばかり。しかも、その半数(8頭)がサンデーサイレンス産駒である。まさしく圧倒的としか表現できない質と量なのだ。

 フジキセキ、エンドスウィープ、ジェイドロバリー、トウカイテイオーなども1頭ずつの産駒名が並ぶのだが、サンデーと比較すれば何とも影が薄い。まして、非社台系の種牡馬は、こと牝馬に関する限り、話題にすら上らない。これがことさらに日高の“地盤沈下”を意味するように思える。文字通り「出る幕がない」状態なのである。

 こうした傾向は、もちろん今に始まったことではない。種牡馬の世界ではとりわけ社台スタリオンの優位が不動のものとして認識されるようになって久しい。日高に数多くいる“その他大勢”の種牡馬の産駒では、今や中央競馬に送り出すことそのものが難しい状況にさえなってきているのである。

 ところで南関東・浦和競馬場では同じ「桜花賞」の名前の牝馬によるクラシックが4月6日に行われる。

 この原稿を書いている時点ではまだ結果が出ていないのだが、出走馬の血統は、中央の桜花賞と比較するとかなり異なる。グランドオペラ、オジジアン、ワカオライデン、ホリスキー、シャンハイ、アラジ、ジェネラス、ヒシアリダー、バブルガムフェロー、カコイーシーズ、パークリージェント。見事に1頭として重なる種牡馬がいない。

 いずれ劣らぬダート巧者揃いの種牡馬ばかりで、しかも種付け料が比較的リーズナブルなクラスの馬が多い。たったこれだけのことから強引に結論を出すのは乱暴な話だが、しかし、一定の傾向はこれで導き出せるだろう。とりわけ牝馬に限って言えば「クラシックレースを目指すならば社台の種牡馬」ということになる。よく聞く話だが、生産馬を見に来た中央の馬主や調教師が、産駒の父親名を聞いてそれが非社台の種牡馬だったりすると途端に興味のなさそうな顔になるというのは残念ながら事実である。「ブランド志向」は、実は生産者よりも馬を買い求める側に顕著だと言えるだろう。消費者の好みがそこにある以上、生産者は需要に合わせた生産馬を作らなければならないのは自明の理である。

 何だか夢のない話だが、最近はもう生まれ落ちた段階で、すでに地方競馬行きが確定してしまっているような生産馬が日高では少なくない。そして、その地方競馬が例外なく苦境に立たされている現状では、よほどの名血でもない限り、牝馬が生まれた時点で「赤字」が確定してしまうのである。「競走馬にさえなれない」サラブレッドが、今年はかなり生まれるだろう。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング