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2004育成馬展示会

  • 2004年04月13日(火) 14時34分
 4月12日、小雨の降りしきるあいにくの天候の下、JRA日高育成牧場(浦河)にて、昨年の1歳市場でJRAが購入し育成・調教を進めてきた「抽選馬」の展示会が開催された。

 昨年、千葉両国市場(1頭)、北海道7月市場(17頭)、青森八戸市場(9頭)、北海道8月市場(63頭)の4市場にて購買した90頭のうち、日高育成牧場に63頭、宮崎育成牧場に27頭がそれぞれ振り分けられこの時期までみっちりと調教を積まれてきたのである。会場には各馬の生産者やその家族、近隣の牧場関係者や中央の調教師なども顔を見せ、午前10時からの立馬展示を熱心に見学した。

 日高育成牧場の63頭の2歳馬は4班に分かれ、牡牝別々に登場。昨年夏以来、見違えるように逞しく成長した我が生産馬を間近に見ながら感無量といった表情を浮かべる人が多かった。

 一通り展示が終了したところで舞台を移し、次は一周1600mのダートコースにて騎乗供覧となる。実際に騎乗して走る姿を来場者に披露するのである。単走と併走とに分かれての供覧に出走したのは39頭。12頭から14頭の3班に分かれ、仕上がりの早さをアピールした。

 この後、抽選馬たちは、馬運車で関東と関西に移動し(あらかじめ東西への配布は決定している)、中山と阪神の両競馬場にて「ドラフト制」による指名を待つこととなる。合わせて90頭のうち、実際に指名されるのは確か東西各々40頭のはずだから10頭が指名漏れとなるわけだ。それらは来月船橋競馬場で行われる「千葉サラブレッドセール」にて今度はJRAが“販売者”に回り、売却される予定である。

 生産者の思いは、さながら秋のプロ野球ドラフト会議を前にした高校生や大学生の保護者にも匹敵するだろう。例年、傾向としては市場価格の安価な牝馬が指名漏れになりやすいが「せっかくここまで順調に調教を積んできたのだから何とか指名してほしい」というのが偽らざる心境のはずだ。

 余談ながら、昨年指名に漏れて千葉のトレーニングセールに上場された「抽選馬」は7頭いる。しかし、昨年の場合は、千葉の市場が空前の盛り上がりを見せ、上場された7頭すべてが売却された。このうち最高価格馬はディアブロ牝馬(母トミハヤフジ)で1100万円。続いてブラックタイアフェアー牝馬(母プリンセスロード)の630万円、バブルガムフェロー牝馬(母マリッジセレモニー)600万円と好成績を残した。他の4頭も含め、これらの「ドラフト外」組が、その後どんな競走成績を残しているのものか、興味深いところである。

 ところで抽選馬の活躍といえば、昨年はフローラS(G2)を勝った牝馬シンコールビーが挙げられる。父サクラローレル、母ダズリンデセプション。三石橋本牧場の生産馬で、この馬は2001年8月市場にて税込み420万円で購買された馬だった。タムロチェリー(2001年阪神ジュベナイルフィリーズ=G1)なども確か税込み420万円だったはずで、決して安価だからといってそれが必ずしも競走成績とは直結しないのがサラブレッドの難しいところではある。

 中小生産者にとっては、生産馬がJRA抽選馬として購買されることが大きな励みになっているのも事実で、この制度を守るためにも2004年度デビュー組の活躍を期待したい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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