ルージュバックもレッツゴードンキも信頼できる人気馬ではない
かつて、波乱の代名詞にも近かったこの3歳牝馬の2400mは、毎年のように難解で乱戦必至だった。しかし、近年の勝ち馬には、シーザリオ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナが名を連ねている。さらには、後年、予備知識なしに歴代の東京優駿勝ち馬一覧を見たファンは、2007日本ダービーを圧勝したウオッカを、負担重量を見るまで牝馬だとは思わないかもしれない。そういう牝馬の時代である。もうオークスは乱戦の時代でもない。
ただ、レベルはとくに関係しないものの、「桜花賞が波乱だった年は、オークスも荒れる」というパターンができているのも事実である。前出のような、抜けた能力を持った牝馬がいない組み合わせの可能性が高いから、一転、波乱含みは納得である。
今年の桜花賞は「5-7-8番人気」の決着だった。オークスには、グレード制が成立して31年、桜花賞を1番人気で負けたのに、またオークスで1番人気に支持された馬は【1-0-0-4】という記録がある。また、過去50年さかのぼっても、桜花賞を単勝オッズ10倍以上で勝ったような伏兵は、オークスは勝っていない記録もある。今年、
ルージュバックも、
レッツゴードンキも、少なくとも信頼できる人気馬ではないのである。
この2400mになってこそ真価発揮が望める
ココロノアイ(父ステイゴールド)に期待したい。頭角を現した東京1600mのアルテミスSは、3コーナー手前から行きたがって、2歳牝馬の東京マイルとすると、非常に厳しい脚の使い方だった。それでも直線早めに先頭に立つと、最後までバテることなく1分34秒4。時計は速いが、スピード能力というより、底力とスタミナで押し切った内容だった。
桜花賞は出負けしたうえ、あの超スロー「50秒0-46秒0」とあって、最初からリズムが崩れ、まったく競馬をしていないに等しい。
スピードだけでなく、総合力が求められた阪神JF3着、チューリップ賞1着の内容を見直したい。
幻の馬トキノミノル、グリーングラス、フジマドンナ、ゼンマツなどがファミリーの代表馬になる芦毛のタイランツクヰーン(父ファラリス、母の父ザテトラーク)を出発点とする名牝系の主流に属し、ココロノアイの3代母は1987年の桜花賞を8馬身差で独走。オークスも2馬身半差で完勝したマックスビューティ。
その産駒でただ1頭の牝馬になる祖母マックスジョリーは、桜花賞、オークスをともにベガ(ハープスターの祖母)の3着にとどまったのち繁殖に上がると、ココロノアイの母になる牝馬ビューティソング1頭を産んだだけで急死している。マックスジョリーは、同じ酒井牧場の送った代表馬ホクトべガ(16勝)と同期生であり、ドバイで客死したホクトべガの主戦だった横山典弘騎手にとって、この世代の酒井牧場の牝馬には、忘れられない想いが関係する。
この枠順なら、ワンアンドオンリーの日本ダービーや、2週前のNHKマイルCのクラリティスカイと同じようなレース運びも可能だろう。正攻法の好位差しの形になれば、2400mこそ歓迎の総合スピード能力がフルに生かし切れる。
素晴らしい動きを取り戻したルージュバックと、桜花賞を完勝して自信をつけたレッツゴードンキ、切れる
アンドリエッテの3頭が相手本線。