本番で速い流れになればより力を発揮できる差し馬3頭/トレセン発秘話
◆浜田調教師「展開を考えれば、うまく乗ってくれたとは思うけど。まさかハナに行くことになるとは…ね」
GI競走の1週前に、JRAから当該GIのミニデータ集的なものがメディアに配信されるのだが、安田記念のそれを見て、思わず笑いそうになってしまった。今年は先行力に富む馬が多いという項目の中に、ミッキーアイル、カレンブラックヒルとともにサンライズメジャーの名もピックアップされていたからだ。
確かに前走のマイラーズC(2着)はハナに行く形にはなったが、誰も行かないスロー(前後半3ハロン35秒3→33秒2)の展開の中で押し出されただけのこと。脚質で分類するなら、中団からの差し馬なのは過去の戦歴を振り返れば明らかで、少なくとも先行力に富むタイプではない。
「展開を考えれば、うまく乗ってくれたとは思うけど。まさかハナに行くことになるとは…ね」とは管理する浜田調教師。当事者にとってもまったく想定外の競馬だったのだ。
誤解のないように言っておくと、何もJRAをディスりたいわけではない。想定外のスローがあまりに多過ぎるというのが今回の本題だ。
実際、マイラーズCだけではない。ヴァンセンヌを管理する松永幹調教師も2着に敗れた前走の京王杯SCに関してこんなことを言っている。
「前走みたいなスローペースは普通の重賞ではありえない。未勝利レベルの遅さだったもんな」
確かに前半3ハロン通過36秒0は翌日の3歳未勝利戦より0秒2遅く、まさに“未勝利レベル”(の流れ)だった。
この京王杯SCまで極端ではないとはいえ、ダービー卿CTにしても後傾ラップ(前後半3ハロン35秒6→34秒2)になっており、今年の主要前哨戦は、前半3ハロン33秒台で流れることも多い本番の安田記念とは正反対のレースばかりだったことになる。これも現マイル路線の層の薄さがもたらしたものなのか…。しかし、松永幹調教師はこんなことも言っている。
「今年の安田記念のメンバーが弱いってことではないと思う。特にダービー卿(CT)を勝ったモーリスなんて、あの流れで、あの後ろから突き抜けるんだから、めちゃくちゃ強かった。あんな勝ち方はなかなかできない。かなりの強敵ですよ」
結局、言われて久しいスローの競馬のオンパレードはメンバーのレベルに関係なく、日常的に起こることなのだろうか。
いずれにせよ、スローで2着に追い込んだヴァンセンヌはもちろん、いつもと違う競馬で好走したサンライズメジャーも、本番が速い流れになれば、より力を発揮できるのは確か。松永幹調教師が最も警戒するモーリスと合わせ、差し馬3頭を現時点の注目馬に挙げておきたい。
(栗東の坂路野郎・高岡功)