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2歳トレーニングセールまで1ヶ月

  • 2004年04月20日(火) 15時34分
 来る5月24日と25日、日高で続けて2歳馬のトレーニングセールが開催される。

 このほど届いた業界紙「馬事通信」に上場予定馬一覧表が掲載されたので簡単に紹介しよう。

 まず、24日(月)はHBA(日高軽種馬農協)のトレーニングセールが行われる。上場予定馬は126頭。申込者(すなわち所有者だろうと思われる)と飼養管理者をざっと見渡しても、ほとんどが生産馬を自分自身で、もしくは地元の育成牧場に預け、調教を積んできた「売り馬」であることが分かる。

 そして、売れ残りのクズ馬などとは到底思えないような種牡馬の産駒も数多い。不景気による需要の減少がいかに深刻なものかが見て取れる。

 上場予定馬はほとんど日高全域に広がっており、名門牧場も多い。中には著名なオーナーブリーダーもいて(しかもまとめて数頭上場予定である)、これもまた現在の日高の不況を物語っている。かつては市場になど生産馬を出したことのないような牧場が名前を連ねているのである。

 上場馬のブラックタイプまで確認していないので、ざっと父母、性別で判断するしかないのだが、サクラバクシンオー牡、マヤノトップガン牡、コマンダーインチーフ牡、エルコンドルパサー牡、ダンスインザダーク牡、パントレセレブル牡、タバスコキャット牡などというところが目に付く。いまさら生産原価のことを考えても野暮な話だろうが、それにしてもプラスアルファの育成費用を上乗せしてこれらの2歳馬はいくらで売却されたら「ペイ」するものか。

 こうした傾向は翌25日(火)に行われる「ひだかトレーニングセール」(主催・ひだか東農協)でも変わらない。こちらは、より上場馬を“厳選”したとかで、上場頭数は計82頭と少ない。地元浦河産馬が目立つが、唯一のサンデーサイレンス産駒(しかも牡)が1頭いる。他にはエルコンドルパサー牝、タイキシャトル牡、ダンスインザダーク牝、フォーティナイナー牝、フジキセキ牝などだろうか。

 昨年までの結果から言えるのは実際に追い切りをかけてタイムを出していても、やはり牡馬の方が売却しやすいのは間違いないということ。HBAの場合、昨年は114頭が上場され46頭が売却されたが、そのうち32頭が牡であった。しかも、上位価格馬ベストテンがすべて牡馬ばかりという極端な牡馬優位の市場成績だった。

 一方のひだかトレーニングセールは69頭上場中、売却30頭。そのうち牡馬は19頭。上位価格馬10傑のうち牡馬は7頭に達した。牝馬の3頭はサンデーサイレンス、スペシャルウィークといった人気種牡馬の産駒であることが高額取引の理由で、やはりこちらも「牡馬有利」の原則は変わらないようだ。

 ともに昨年は売却率が40%台前半という結果に終わり、およそ6割近い2歳馬が売れ残った計算になる。かつてこのコラムでも「トレーニングセールの出身馬が必ずしも即戦力としてすぐデビューし勝ち上がっているとは言いがたい」と書いたことがあるが、時としてヒシミラクルのごとき逸材もまた出現するセールなのだ。

 仕上げも佳境に入り、あと1ヵ月で本番を迎えるトレーニングセールだが、今年は果たしていかなる結果が待っているものか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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