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人生、意気に感ず。功名、誰かまた論ぜん

  • 2015年06月25日(木) 12時00分


引きつけられた西浦調教師の言葉

 今の世の中、あまりにも利害で動くことが目につく。たまには、功名など考えず、感動で動くことがあってもいいではないか。そんなことが頭にいつもあるものだから、函館スプリントSでティーハーフが勝ったときの西浦調教師の言葉に引きつけられた。2歳時の調教から携わってきた国分優作騎手での勝利に、「このジョッキーで結果を出せたのがうれしい」と述べたと言う。ティーハーフのデビュー時から一緒だったパートナーは、厩舎の皆さんのおかげでこれだけの馬に乗せていただき感謝していますと、その心の内をあらわしていた。この馬に携わるチームの信頼関係がどんなであるか、目に浮ぶ。

「人生、意気に感ず。功名、誰かまた論ぜん」という中国、唐代の詩から選びだした「唐詩選」の中の有名な句がある。人生意気に感ずるからこその行動、感動で動く人生があってもいい。自分の才能を認めてくれた人の意気に感じて全身を捧げる、そういう感動が大切なのであって、それ以外のことは思い描くことはないのだ。ただ、競馬には必ず結果がともなうものだから、それがどうでもいいというわけにはいかない。意気に感じつつも、結果が出せたから、「人生、意気に感ず」が成り立ったのだ。それも、豪快に大外から一気に差し切ったのだから、これ以上のことはなかった。これほど、はっきり意気に感ずを発揮できたのだから。

 傍目には、いつもテンに行けなくてヒヤッとさせるティーハーフだが、国分優騎手はこの馬を知り尽しているし、任されているという強い心があるから、全然焦らずに戦況を見ていられた。前を見たら結構やり合っていたのでと、激しい先行争いを尻目に脚をため、直線、一気に仕掛けたのだった。こういうタイプは、どの舞台であろうとも人の気を引く。西浦調教師の思い、それを受ける国分優騎手、サマースプリントシリーズのこの夏の話題の1頭になった。

 とてつもない追い込みと言えば、ユニコーンSのノンコノユメもスゴかった。戦った7戦全てでレース最速の上がりを記録、ダート界の新星であることは間違いない。この陣営にも、「人生、意気に感ず」を見い出せたらこれ以上のことはないのだが。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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