◆南井助手「道中は結構競られたからね。あの競馬で2着に残るんだからたいしたもの。やっぱりこの馬は走るよ」
自らが記録したレコードタイムが破られるとジョッキーは悲しい気持ちになるようだ。1996年のスワンS(京都芝外1400メートル)でスギノハヤカゼに騎乗。1分19秒3という驚異的なレコードをマークした田島裕は競馬新聞に自分の名が記載されていることに喜びを感じていたという。
「レース名の下に自分の名前が絶対入っているんだから、悪い気持ちはしないよ。スギノハヤカゼであのタイムを出したころは高速馬場の全盛期。しかも速い流れになって、芝が傷んでいないDコース…時計が出る条件が揃っていた。日本レコードをマグナーテンに破られた時(2002年新潟芝内1400メートルのNSTオープン=1分19秒0)もショックだったけど、この前コースレコードも破られて、俺の名前が完全になくなってしまったのはさみしい(笑い)」
今年5月、安土城Sでウリウリ(1分19秒0)に塗り替えられるまで19年間もレコードを保持していたのだから、たとえ名前が消えてしまっても素晴らしい記録に違いない。一方で、その驚異的なタイムを更新し、マグナーテンの日本レコードに並ぶ時計を叩き出したウリウリもまた素晴らしい。
ん? 素晴らしいのはウリウリだけ? いや、そうではない。日本レコードを記録するぐらいのラップを刻みながら、2着に粘り込んだホウライアキコも素晴らしい走りではなかったか。
「道中は結構競られたからね。あの競馬で2着に残るんだからたいしたもの。やっぱりこの馬は走るよ」と南井助手。
典型的な夏馬で、昨年の冬とは違い毛ヅヤも冴え、いいころのうるささも戻っているというホウライアキコ。前回はウリウリのレコードVを演出する役割になってしまったが、持ち前のスピードを存分に生かせるスプリント戦のCBC賞なら逆襲もあり、と考える次第である。
(栗東の坂路野郎・高岡功)