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4000勝騎手、調教師へ

  • 2015年07月31日(金) 18時00分


◆「がむしゃらにやって、結果を出していくだけです」

 少し前のことになるが、地方競馬全国協会より『平成27年度第1回調教師・騎手免許試験新規合格者について』というリリースがあり、8月1日付け免許合格者が発表になった。

 そのなかで、おおっ!と思ったのは、兵庫で調教師に合格した3名。有馬澄男騎手、北野真弘騎手、徳本慶一厩務員(元調教師)。いずれも他場からの移籍組だ。有馬騎手と徳本元調教師は、競馬場廃止による移籍。北野騎手は高知競馬の売上が下がっていた時期の決断。地方競馬では、いまだ“移籍”が容易なことではなく、移籍してから調教師試験に合格するまでの心境について、それぞれにうかがってみた。3回に分けてお伝えする今回、まずは有馬騎手。

 有馬澄男騎手は1957年5月9日生まれの58歳。1974年に大分県・中津競馬でデビュー。5年目の1978年から2000年まで23年連続で年間100勝以上を挙げ、中津のトップジョッキーとして活躍した。

 しかし中津競馬は2001年3月22日の開催を最後に廃止。当初は6月まで開催される予定が、場内の映像業者との契約更新が不調に終わり、4月1日からの開催が打ち切られる形での廃止だった。

 有馬騎手はその前年、2000年には自身の年間最多勝となる220勝を記録していただけに、まさに絶頂期での突然の廃止だった。

 そして移籍した兵庫で2002年に騎手免許を再取得。2004年には117勝を挙げ、兵庫リーディング4位に食い込むなど、40歳代半ばでの移籍でも存在感を示した。最後の騎乗となったのは7月15日第9レースで、8着。地方通算4185勝(ほかに中央1勝)は歴代7位。重賞勝利は52勝(うち兵庫移籍後4勝)という記録を残した。

地方競馬に吠える

2015年7月24日、引退セレモニーにて


「兵庫への移籍は、騎手を続けたいと思ったことが第一ですね。九州(佐賀・荒尾)も考えましたが、二の舞(廃止)になるんじゃないかという不安もありました。それを考えると、南関東か、道営か、関西か、一番近いということで兵庫にしました」

 兵庫移籍後の思い出の馬をうかがった。

「やはり重賞を勝たせてもらった、マタカッタ(兵庫大賞典、摂津盃)と、ロードバクシン(園田金盃、楠賞)ですね。それと、中央で勝たせてもらったホウヨウソウルですね(2004年12月5日阪神、2歳500万下)。欲を言えば、もっとたくさん重賞は勝ちたかったですけど、騎手としては十分に乗りました」

 引退を考えはじめたのは2年ほど前、勝ち鞍が年々落ちてきてのことだったという。

「体力的なことは気にならなかったのですが、気持ちの問題ですね。5000勝というと、年齢を考えると程遠いですし、次に目標もなかったですから。そう思ったときに、調教師という考えになりました。ぼくなりにがんばってきましたから、悔いはありません」

 兵庫では、調教師は70歳での定年制がある。目標についてうかがった。

「定年まであと12年もないですから、目標を置くとかでなく、たぶん精一杯やって終わるような感じになると思うんですよ。どんなことでも軌道に乗るには10年くらいはかかりますから。とりあえずがむしゃらにやって、結果を出していくだけです。もし中津があったら、どれくらい乗れたかはわかりませんが、今はここにいられるというだけで感謝しています。それで調教師にも受かったわけですから」

 調教師としてのスタートは、厩舎が空き次第ということになるようだ。41年近くに及んだ騎手としては数字で偉大な記録を残したが、調教師としては記録に残る馬を輩出してくれることを期待したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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