ダートでの大変身に期待したい
3歳馬のダートグレード競走は、現在のところきわめて少ない。5月の園田で、兵庫チャンピオンS(Jpn2)。6月の川崎の関東オークス(Jpn2)と、東京のユニコーンS(G3)。7月に大井のジャパンダートダービー(Jpn1)。そしてこの新潟のレパードS(G3)。全国にたった5競走しか組まれていない。ただ、今年はドバイのUAEダービー(G2)に挑戦してきた馬が2頭ここに駒を進めてきたうえ、東京ダービーの
ラッキープリンスも再び交流重賞に登場するから、G3重賞にしてはメンバーは揃っている。ここでノンコノユメと同ランクの評価を受ける馬が出現し、秋後半のチャンピオンズCに複数の3歳馬が挑戦するようにでもなると、春の3歳ダートグレード競走は、もっと厚みを増すことだろう。
ゴールデンバローズの巻き返し、
クロスクリーガーの一段のパワーアップも注目だが、新勢力の台頭に期待して、ダート初挑戦の
ダノンリバティ(父キングカメハメハ)に注目したい。
重賞で実績を残しているグループ相手に、方向転換しての初ダートは明らかに不利だが、古馬のダートチャンピオン級に初ダートの馬が挑戦するのとは違い、まだみんな成長の途上の3歳馬。実績上位といっても、G1格の勝ち馬がいるわけではない。ダノンリバティには、クラシック路線で再三エース級と互角に戦ってきた強みもある。
父キングカメハメハは、最近5年間の全日本ダート限定サイアーランキング「1、1、1、2、1」位。ダノンリバティは、新潟芝1800mの新馬戦を上がり33秒3で快勝しているが、鋭く切れたというよりスケールの差で押し切り勝ちの印象もあり、高い平坦コースに対する適性は、ダートに対する適性の高さを示したようなところもあった。ダート巧者=平坦巧者という結びつきは珍しくない。
母方は、アメリカでも代表的な名牝系と形容されるファミリー。社台グループの創設者、故吉田善哉さんが、ユアホスト、ユアホステスに近い牝馬の導入を熱望し、ようやく手に入れたのが一族のスカーレットインク(父クリムズンサタン)だったといわれる。マジェスティックプリンスや、近年のリアルクワイエットが並ぶ一族でもある。
スカーレットインクは大成功してファミリーの枝を伸ばしている。ダイワメジャー、同スカーレットの分枝も、ヴァーミリアンや、ソリタリーキングの代表するダート適性の高さを誇る枝も、スカーレットインク一族である。ダノンリバティは、ヴァーミリアンの近親馬になる。
ダノンリバティは、キングカメハメハとの配合で、典型的なダート巧者を送ることも珍しくないノーザンダンサーの[4・5×4・5]の強いクロスを持つと同時に、クリムズンサタンの属するアメリカの伝説にも近いサイアーライン[ヒムヤー…ドミノ]直系種牡馬が、母方にも、父方にも、登場することになった。芝では詰めが甘かったが、ダートでの大変身に期待したい。
当然、ゴールデンバローズ、クロスクリーガーは強力だが、公営のラッキープリンスも今回は怖い。以下の伏兵にも少し流したい。