スペシャルウィークの後継種牡馬にふさわしいタイプ
菊花賞3000mの日本レコード勝ちが物語る、本当の大物なのか。まだ半信半疑にならざるをえない未知の部分は大きいが、
トーホウジャッカル(父スペシャルウィーク)の秘める可能性に期待したい。
「60秒9-61秒3-58秒8」=3分01秒0の快レコードは、高速の芝なので多少は割り引く必要はあるが、東日本大震災の日に生まれ、丈夫ではなく3歳5月のデビューになりながら、わずか5ヶ月後には現競走体系になってから史上最速の日程で「菊花賞」を大レコードで快勝したから、すごい。4分の3同血の姉トーホウアマポーラが1200mのCBC賞を勝って間もなくであり、近親には短距離タイプも多く、長距離型とは思われていない側面もあったから、「異端」の菊花賞馬の印象もあった。
だが、反動もあってブランクが生じ、8ヶ月ぶりになった今年6月の宝塚記念を小差4着。全体レベルはもう一歩のG1だったとはいえ、あの内容は「さすが」である。
スピード色が強いとされた牝系も、少しさかのぼれば「ファピアノ、クワイエットアメリカン(あと一歩のハナ差で2冠にとどまったリアルクワイエットの父)、オジジアン、オナーアンドグロリー」などが並ぶ名牝系であり、母トーホウガイアは種牡馬クワイエットアメリカンと同じように、自身がファピアノのファミリーでありながら、3代父がそのファピアノという意図的な配合である。意外性を秘めている。
父スペシャルウィーク(20歳)は、大物牝馬ブエナビスタ、シーザリオなどを送りながら、後継種牡馬の極端に少ない種牡馬(フロリースカップ系は多分に連続する種牡馬族ではない一面もある)であり、スピード系のパワーを感じさせない。仕上がると細身に映るトーホウジャッカルは、父にかなり似ている部分が多いから、スペシャルウィークが晩年に送り出した自身の後継種牡馬にふさわしいタイプともいえる。
古馬長距離界のエースに君臨するというたくましいタイプではなくとも、スペシャルウィークと同じようにここ一番のビッグレース向きの馬に育って欲しいのが、ここまで人気の中心になったことがないトーホウジャッカルである。
「北九州記念」は、トーホウジャッカルと同じようにここまで順調ではなく、3歳時に大けがをしたため、まだ【5-0-0-0】にとどまる
ビッグアーサーの本格化に期待したい。こちらはこの中間、バクシンオー譲りのパワーと迫力が加わってきた。秋のG1に向けて一段と力強いレースを展開してくれるだろう。母の父キングマンボ、祖母はサドラーズウェルズの牝馬。4代母は仏オークスを制した後、サンサンの勝った凱旋門賞を小差2着がある。「不滅のサクラバクシンオー」父系の、大物後継種牡馬になるくらいに出世したい。