函館競馬場「火曜追い」をプラスにできる馬が…/トレセン発秘話
◆デメリットばかりとは限らない
札幌開幕から“北のトレセン”として稼働してきた函館競馬場も、27日(木曜)をもってその役割を全うする。もっとも札幌に移動する馬に限っては、馬運車手配の都合で前日26日退キュウが必須。ゆえに今年も全休明けの25日、総勢20頭が“非常事態”としての火曜追いを行った。
「通常なら馬をほぐして水曜にやりたいけど、体力のない馬は追い日に輸送するほうが断然ハイリスク。火曜にソコソコ負荷をかけておき、足りないようなら輸送後の様子を見て週末補うしかありませんね」
こう語ったのはモンドシャルナ、サトーリアスの2頭に火曜追いを課した角居キュウ舎の辻野泰之助手。また、レッドソロモンの手綱を取った庄野キュウ舎の久保智史助手は「休み明けだしびっしりやるのがベターですが、全休明けじゃ無理できない。こういう場合は特例として月曜に馬場を開場してくれるとありがたいんですが…」と調整の難しさを口にしていた。少なくとも今週の函館在キュウ馬、当日の気配が要チェックとなることは覚えておきたい。
とはいえ異例の火曜追いも、実はデメリットばかりとは限らない。かつて栗東では「稽古で疲労が残りやすい馬」を対象に、吉田直弘キュウ舎が意識的に火曜追いを試みた時期がある。また数年前の北海道では、某助手が単なる勘違いで火曜追いを行い青ざめたものの、その馬が激走。しかもその馬のキャリアで好成績は、後にも先にもその週の競馬だけだった…。こんな笑い話が実際に存在する。普段でも「予定と時計が全然違う」とトレーナーが頭を抱えた揚げ句に勝つ馬がいるなど、とにかく人間の思惑通り運ばないのがサラブレッドであり、競馬の面白さ。もし火曜追いをプラスにする馬さえ見つければ、きっと馬券の勝利者となり得よう。
一方で、こんな声があることも付け加えておく。
「函館は札幌閉幕の10日前に閉めてしまうが、もし逆に開催終了の1週後まで開場してくれたら、ワンクッション置いて秋開催にそのまま馬を持っていけるんだよね。JRAの経費の都合も分かるけれど、札幌が終わって一度リセットせざるを得ない現状は、我々にとってベストではない」(松田国英調教師)
トレセン施設としての評価も高い函館競馬場。その特色を可能な限り生かすのも、競馬を盛り上げる重要施策のはずではある。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)